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![]() マンションの耐震診断・耐震補強関係 1995年の阪神淡路大震災、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災と震度7に相当する地震も頻発しています。 ![]() 1 耐震に関する情報が判り難い 耐震とはどのようなことかお解りになりますか。 耐震診断をして耐震補強の設計をし、耐震補強工事をする、との流れが一般的に区や、市等自治体などでも示されています。 しかし、どの程度の地震に対してどのように対応するのか明確に示されているものがほとんどありません。 例えば、東日本大震災時の東京の震度5強の地震に対してどの程度の対応なのか見てみましょう。 気象庁の震度階級関連解説表の鉄筋コンクリート造建物で震度5強の内容は「耐震性の低い建物では、壁、梁、柱などに大きな亀裂が生じるものがある。耐震性の高い建物でも、壁などに亀裂が生じるものがある。」となっています。 一方国土交通省の現行の耐震基準(新耐震基準)は昭和 56年 6月から適用されおり、「中規模の地震(震度5強程度)に対しては、ほとんど損傷を生じず」となっています。 要するに、震度5強程度の地震に対して多少のヒビ割れ程度は発生するかも知れないが、ほとんど損傷が出ないことを想定した建物として、構造設計をしなさいと言うことなのです。 耐震性能についてIs値やIw値などで説明している自治体や設計事務所が多いのですが、感覚として判り難いので、これらの説明は省略します。 ![]() 2 旧耐震設計の考え方 旧耐震構造設計の場合も「震度 5 強程度」(当時強、弱はなく震度5程度)と想定される地震の最大値の力を計算値として考えて設計していますが、時間の長い地震動や横揺れや縦揺れ、複合の揺れなど、個別の地震の振動に対応させている訳ではありませんので、思わぬ部分が損傷する場合があります。 震度とは、もともと地震の揺れの体感を数値に現したもので、日本では気象庁の震度階級が使われています。 その体感の揺れに合致する力を想定するのは難しいので、ピーク時の揺れの力に合せて構造設計しているのです。 したがって、瞬間最大振動力としては、新耐震も旧耐震も同じような力に対応した耐震設計なのです。 このような考えの元に、耐震設計法が出来てから、その後に起きた地震の被害の経験を取り入れて耐震設計も進化してきました。 ここまでが新耐震前(旧耐震設計)の考え方なのです。 したがって、「震度 5 強程度」に対応する構造体としては、それほど新耐震設計法(昭和56年6月以後)とあまり変わっていないと言えます。 ![]() 3 新耐震設計法との違い それでは、何が違うかと言えば、決定的に違うのが「震度 5 強程度」以後の震度6強、震度7に対する対応なのです。 旧耐震では「震度 5 強程度」までに対応していれば、OKだったのですが、新耐震設計法では、震度6強、震度7程度まで、すなわち「極めてまれにしか発生しない地震」手っ取り早くいえば「阪神淡路大震災クラスの地震」(何百年に一度という)大地震にも対応することになったのです。 但し、対応の仕方は、「阪神淡路大震災クラスの地震」震度7クラスの地震ですので、建物が部分的に壊れることは甘受する。 しかしその場合でも、建物全体が壊れて人命が危険にさらされるような事態だけは避けておこう。との考え方が新耐震の基本の構造設計法なのです。 「震度 5 強程度」の地震の場合は最小限の損傷で済むように設計し、「震度7程度」の地震の場合には部分的に壊れても人が逃げられる躯体になるようにしておくことが目標になったのです。 構造設計の考え方はあくまでも目標であり、確実に対応しているかどうかではありません。 要するに、地震の波でも解らないことが沢山ありますので、新耐震構造設計だからと言って、「震度 5 強程度」地震によって、壊れる部分が出てくる建物があるかもしれませんし、旧耐震の建物でも「震度7程度」の地震に遭遇して、十分人命に影響のない建物になっている場合もあるのです。 ![]() 4 耐震診断や補強は考え方がちがうの? 完成後の建物の耐震診断、耐震設計は新耐震設計とあまり変わりません。 したがって、1981年(昭和56年)以後の建物は、新耐震設計で設計しているので、特殊な場合を除いてまず問題ないといえます。 特殊な場合とは、姉歯設計のように設計基準を無視した設計であった場合や、手抜き施工で建てられて耐震基準に合ってない場合等です。 現実的には、先の東日本大震災では震度5強を東京でも感じましたが、その時に廻りの建物に比べて、異常に壊れたり、損傷部分が多かった場合等です。 一方1981年(昭和56年)以前の建物の場合は、今まで述べて来たように、震度6、震度7の場合の対応が不足していると思われるので、耐震診断をし耐震補強設計をし耐震補強をする必要があるのです。 ![]() 5 専門委員会の設置と耐震調査診断の必要性の検討 耐震調査や耐震診断が必要な建物は(4)で示したので、その範疇にはいる建物の場合には、耐震調査の準備をするのが良いのですが、先ずは耐震診断の専門委員会を管理組合で設置することから始めます。 専門委員会で確認申請時の図面や構造計算書、確認済証、竣工図、検査済証等を調べ、何があるかないかを確認すのことです。 但し資料を判断するのも専門的知識が必要になりますので、この状況で予備耐震診断として、コンサルタントや専門家のサポートを受けるのが良い方法だと思います。 コンサルタントや専門家を交えて本当に耐震診断を受けた方が良いのかを検討するのがこの時期なのです。 構造設計図書や構造計算書が無い場合に、これらの代わりの資料を制作するのにはかなりの費用が必要になることも分かります。 さらに、この時期に考えならなければいけないことは、耐震診断を行ない、補強が必要になった場合には、耐震補強設計と耐震補強工事が必要になるということです。 耐震補強設計と耐震補強工事は結構費用が必要になり、補助金等で賄い切れず管理組合で負担する費用が足りない場合には、耐震補強工事が繰り延べになる場合もあり、そのような場合、不動産の重要事項に記述する項目となっているため、資産価値が減る場合もあるのです。 このように資産価値の問題もあるため、本格的な耐震診断の実施には、総会決議が必要になるのです。 ![]() 6 耐震診断の結果を受けて耐震補強設計を行なう 耐震診断で耐震補強の必要ありとの結果が出た場合には、耐震補強設計や耐震補強工事を行なうことになります。 耐震診断は概ね市や区等自治体の補助金があるので、管理組合として出す費用は比較的少なく不要の場合もあるが、耐震補強設計や耐震補強工事の場合には、補助金が少なく、管理組合の出費が結構多くなるのです。 このため、再度総会において耐震補強工事の事業決定決議が必要になります。 耐震診断で資料が揃えば、その資料に基づき耐震補強設計書の作成、耐震補強工事施工方法の検討、予算書の作成ができ、耐震補強工事の実施までスムーズに進めることが可能になるのです。 耐震診断を受けた方が良い建物や耐震診断の内容の詳細については 診断が必要な建物と内容をご覧ください。 ![]() 7 耐震補強設計書により耐震補強工事を行なう 耐震補強工事でも、上記(6)で設計図書から予算書まで揃えれば、透明性のある相見積が可能になります。 大規模修繕工事の時と同様に、管理組合の推薦(管理組合で安心出来る施工会社が無ければ不要)、管理会社の推薦、設計事務所の推薦による4、5社の相見積による入札が可能になるため、工事の質を保ちながら安価な補強工事をすることが出来ます。 大規模修繕工事の進め方を参考にしてください。 大規模修繕工事と耐震調査診断を並行して行なうと良いとの、自治体等の資料もあります。 しかし、耐震診断を行ない補強が必要との診断結果が出た場合には、補強工事を直ぐ行なえれば良いのですが、大規模修繕工事の費用と両方の費用を賄うのは、大変なことです。 資産価値の件も有、私共の見解ではそれぞれ別に行なった方が、管理組合の方々の賛同が得やすいと考えています。 |
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