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欠陥になり易い部分−2:土台、柱・梁、筋違、小屋組
INDEX
● 1. 敷地、地盤、基礎
● 2. 土台、柱・梁、筋違、小屋組
☆土台・床束:
☆柱・梁:
☆筋違:
☆小屋組:
● 2. 土台、柱・梁、筋違、小屋組
☆土台・床束:
土台に関しての主な欠陥は土台の寸法、、火打土台、束石と床束、
アンカーボルト、防腐防蟻処置等です。
★寸法はまず材料の大きさです。120mmx120mmが良いのですが、
105mmx105mmを使用する場合もあります。
これ以下の90mmx90mmは特殊な場合を除いて欠陥の部類に入ります。
基礎との寸法が狂うと、基礎から一部外れた土台になることがあります。
基礎から外れた土台はこの時点で欠陥ですので基礎の補強をする等の対策が
必要です。
★火打土台は土台のコーナー部に入っている斜めの補強部材です。
重要なコーナーには補強としてこの火打土台が必要です。
木材の場合も金物の場合もありますが、ボルトでしっかりと土台に固定
されていることが必要です。
部材があるかどうかが一番重要ですが、火打土台の部材があっても金物で
確実に固定されていなければ役に立ちません。
★束石と床束も欠陥の多い部分です。束石は既成のコンクリートの束石が主に
使われていますが、省略されていることや床束の調整として柱の切れ端を
突っ込んであることもあります。根がらみ(15mm厚程度の板材)を
取り付けていない場合も沢山見かけます。
鎹(かすがい)等の金物が省かれている場合もあります。
根がらみ材や鎹金物等で地震の場合の束の移動や転倒を防ぐのですから、
これらの補強部材は重要です。きちっとした施工を確かめて下さい。
私が鑑定をした住宅でも床束が大引きには固定してありましたが束石との
場所が合わず宙に浮いている床束を見ています。
簡単に直せそうなのに信じられないような欠陥が放置されています。
★アンカーボルトは2、3m程度の間隔で入れられているか、ボルトでしっかり
と固定されているか、ボルトの頭がじゃまになっていないか等です。
アンカーボルトは基礎に埋め込んでおくものですので、極端に曲がって
いないか、間柱や柱とぶつかっていないか等も見ておく必要があります。
さらにボルトの前にワッシャープレートを入れずにボルト締めしている
土台をたまに見かけますが、地震時には押さえが効かなくなります。
土台には継手がありますが、継手部分にアンカーボルトがこないように
します。また、床下換気口は基礎の欠落部分ですので、継手部分がこない
ようにします。
★防腐防蟻処置は、住宅金融公庫では一般仕様になっていますが、シックハウス
の原因としての可能性も高く、必ずしも必要ではありませんが、建築基準法
の制約もあり、ほとんどの木造住宅の床上1m範囲までは防腐防蟻処置が
おこなわれるのが通常です。
ただしこれからは、なるべく、化学物質の薬剤に頼らないで健康な住宅を
造る方向に向かい始めています。薬剤を使わないためには、換気の良い
基礎にし、金融公庫を使う場合は、檜材等の薬剤のいらない土台部材に
するか、ベタ基礎にする事です。
☆柱・梁:
柱・梁に関する欠陥は、寸法不足、仕口不良、金物不良、傾き等です。
★寸法不足には、材の太さや大きさの不足と、長さの不足があります。
柱の太さに関しては、瓦を屋根にのせたり土蔵造りなどの、加重が重い
建物に関しては、1階で120mm(4寸)の柱の場合、柱の実寸法
(梁と梁の間の寸法)で2640mmまで可能、2階では3000mmまで
可能です。金属屋根やスレート屋根(コロニアル等)の軽い建物で105
mm(3寸5分)の柱で1階は3150mmまで可能、2階で3465mm
まで可能となります。
柱は90mmを使用しない限りあまり問題はないと思いますが、重量の重い
建物の場合は注意が必要です。材種(檜や杉等)にも注意が必要となります。
梁の太さに関しては間口や桁行きの柱間隔や柱のスパン、2階の床梁、
小屋梁、3階建ての場合など、いろいろありチェックするのは容易ではあり
ません。床伏せの図面と合っていることはチェックをしておく必要が
ありますが、それ以上は専門家のチェックが必要です。
建物の四隅や重要な柱は通し柱にしますので、確認できます。
大きな梁は2本の梁を繋ぐことがありますが、継手の隙間に注意しましょう。
3mm以上の隙間が開いていると要注意です。
継手のボルトがしっかり締まっているかも確かめて下さい。
★仕口不良は梁や柱の寸法不足に因るものがほとんどです。
柱や梁の継手、梁と梁の継手などの組み合わせが良くない場合です。
近頃の継手はプレカットとのコンピュータ制御の工作機械で継手を制作
していますので、合わないと言うことは少ないようですが、
長さが間違ったり、組み手の精度が良すぎて、叩きすぎて変形する事が
あります。
★金物不良は金物の未使用、使用金物が違っている場合、金物を取り付ける釘や
ビス、ボルトの本数の不足や締め付けが悪い場合があります。金物が付いて
いれば分からないだろうと、いい加減な金物を取り付けている建物も
あります。
金物を使用しなければいけない部分は、住宅金融公庫の仕様書等に出て
いますので、この仕様書をよく見てチェックする必要があります。
一般的には、土台と柱や筋違、梁と柱や梁、筋違や火打梁等、また1階
の柱と2階の柱が分かれている場合の繋ぎ部分にも使われます。
どの様な金物が何処に使われるかを、チェックするのは結構大変なことです。
★傾きとは、柱を立てた時に垂直に立たずに、曲がって(傾いて)立てしまう
ことです。
上棟時の建方の時全ての柱を垂直に立てることは、なかなか難しいことです。
調整しバランスを見ながら建方をするのですが、うまくバランスが取れずに
傾いたまま立ててしまうことがあります。この傾きをそのままにしておくと、
2階や屋根の重さでひどくなることがあります。
☆筋違:
筋違の欠陥は取り付け方や補強金物の取扱、耐力壁のバランスの悪さ等です。
★筋違の取り付け方は、柱や梁に重ねて板厚15mmの部材を取り付ける。
板厚30mm以上の部材は柱と梁の中にはめ込むように取り付ける。
図面の筋違の位置と実際に現場の筋違をチェックし不足していないか
どうかを確かめる。
図面と現場の筋違の位置や本数が違っている場合があります。
★筋違金物は筋違の板厚30mm以上のはめ込みタイプの筋違には用いるように
します。留める釘の種類や本数は金物の仕様に合わせる必要があります。
鑑定物件で良くあるのは、金物は使っているのですが、釘の本数が少ない
場合です。
★筋違のバランスの悪さは、今までの住宅に多く見られました。
南側の窓を大きくとるために南側の壁量が不足したり、狭い敷地で1階に
駐車スペースを配置して壁量が不足する場合などがあります。
バランスに関しては、よく見れば分かりますので、耐力壁に色を付けて
チェックしてみて下さい。
☆小屋組:
小屋組は欠陥が集中する場所です。
私が鑑定で見た住宅でも、ほとんど小屋組部分が一番多くの欠陥がある場所
でした。
小屋の火打梁、小屋の筋違・振れ止め、小屋束、棟木・母屋、垂木など
全ての部材に欠陥が隠れています。
★小屋の火打梁は土台や梁の火打梁と同様に水平の力に対応する補強部材です。
和小屋の場合は、強度を確保するために梁材として、丸太の部分が残って
いる梁材を使うことも多く、火打材の取り付けが面倒になる場合があります。
また、和小屋に限らず最上部のため後回しになり忘れられる場合もあります。
さらに、火打材は付いているのですが、金物(ボルト等)の締め付け
不良もよく見かけます。
★小屋の筋違・振れ止めに関しては、1、2階の筋違と同じですが材料としては、
15mmx90mmの板材が小屋束に重ねて釘で打ち付ける方法で取り付け
られます。この筋違や振れ止めはほとんど図面で指示されていません。
大工さんの経験で取り付けることが多く、最低限の数量になりますが、
釘留がかなりいい加減な場合を見ることが多いのです。数量が少ないから
余計に確実に固定してもらう必要がある部材です。
★小屋束の不良はほとんどが寸法の問題です。屋根には勾配があり、その勾配を
受け持っているのが小屋束の寸法です。したがって、場所によって長さが
違います。この長さが違うことで手間がかかり、時々長さがおかしい部材と
なることがあります。
長めに違う場合は調整により直りますが、短めで寸法が足りない場合には、
継ぎ足しで誤魔化したり、鎹(かすがい)金物等で留めるだけで、
宙吊りまま放置している場合があります。
私の調査した住宅でも、調査物件の1棟に付1カ所や2カ所宙吊りの
小屋束を見かけています。調査物件ですので、施工が悪いと言えますが、
それにしても多くの欠陥小屋束が存在するものです。
★棟木・母屋に関してはそれほど欠陥は目立ちません。あるのは、棟木と母屋
材の寸法不足や母屋の間隔が広すぎる、小屋束との接合部分の金物不良等
です。屋根は風により揚力が発生し持ち上げられる力が働きます。
この力に対抗するためには小屋束に金物でしっかりと固定しなければ
なりません。結局小屋束との固定方法が問題となります。
★垂木の不良は垂木材の寸法と間隔が主です。垂木材の寸法は根太材より
大きめの材を使うのが普通です。母屋の間隔により変わってきますが、
高さとして60mm以上の部材を使うことが一般的です。
調査物件での母屋の欠陥では、部材の大きさや間隔以外に釘打ち不良が
ありました。母屋の釘打ちは屋根に野地板(現在は合板がほとんど)を
乗せてから打ち込みますので、母屋の場所が見えません。線を引いて気を
付けて釘を打てば良いのですが、感に頼って釘を打った末に曲がって母屋に
入らず効かない釘になってしまったわけです。気を使う大工さんならば、
釘を打ったときに効かないのが分かりますから、追加して横にくぎを打ち
補強によって欠陥は避けられます。費用の少ない下請け大工さんの場合は、
時間に追われ補強策も気が付かずに次の作業に移ってしまいます。
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