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APSS設計事務所 菊池 です。
54・「住まい」での子供室を見直そう。−2
◇地球環境に貢献する「住まい」を考えていますか?◇
http://www.apssk.com/meru/kekanmm35.html#A
自分で「住まい」造りを考えるための知識を、
メールマガジン(MM)としてお送りしています。
「住まい」造りに役に立つMMですので、楽しみながらお読み下さい。
前回までのメールマガジンをお読みになりたい方は下記からどうぞ。
◇メールマガジン目次http://www.apssk.com/kekanmeru00.html◇
54・「住まい」での子供室を見直そう。−2
日本住宅協会の機関誌「住宅」の特集/心の健康とハウジング・に
大学の教授達に混じらせて戴き、執筆した小論の続きです。
これからも、役に立つMMをお送り致しますので、宜しくお願い致します。
「2.日本の伝統は素晴らしい子供を育てる。」
前回伝えた、子供達の状況を改善するための「住まい」はどのようにしたらよいのであろうか。
一.日本の伝統的「住まい」の良さから学ぼう。
日本の「住まい」の歴史から見てみると、江戸末期から明治期までの住宅は
純和風があたりまえで、子供室の区別は無く、柱、梁に土壁、襖、障子が間仕切りとして
使われていた。
この時期の家族関係の考え方は、家族に対する配慮や遠慮であり、障子や襖、
欄間等を介して、音や気配が感じられ、隣の部屋に居る人に対しても、気を使う必要があり、
日本のよき伝統の、他人に対する気使いが自然に身に付く環境であった。
田の字プランとして紹介される田舎屋の例で、間仕切りは障子、襖で出来ている。
http://www.apssk.com/meru/kekanmm54ph1.html#A
当時は3世代同居(祖父母、父母、子供)は当たり前であり、躾も、目上に対する礼節や配慮、
さらに年長の人を大切にすることなどを、家庭内でも道徳教育としても教えていた。
子供の独立性でも、義務教育が短いこともあり、
早く大人としての振る舞いを身に付なければならず、住まいの襖、障子、
欄間等の開放性の高さが、いい意味で住んでる家族に精神的な負担を与え、
家族が互いに気を使い、気づきの精神が生かされ、
配慮や遠慮の感覚が自然と身についた時代であった。
大正から昭和の10年代までは、新しい材料としての鉄筋コンクリートや
鉄骨を使った住まいも登場し、不燃住宅としても、新しい住まいとしても注目されたが、
室内の間仕切り等はそれほど変化がなく、
家族の住まい方や躾の考え方も明治期とそれほど変化はなかった。
ただ、生活も一部には豊かになり始めており、子供室との概念は認識されてきたのがこのころで、
子供のために部屋を造ったり、子供室を考えた設計コンペなども催されるようになった。
この時期の子供室の考え方は、子供は親にとって可愛くまた跡継ぎとして
大切な存在であり、子供室が無かった時代から、子供室が設置できる時代になったため、
新しい子供室としての考え方を模索していた時期と言える。
現在の子供室の一般的な考え方は、未だにこの時代の意識から
発展してないのかもしれないが、この当時は子供が多かったせいもあり、
1室1人の環境の整備はほとんどなく、同性の子供を同じ部屋に入れたり、
年の違いで部屋を使わせたりしていたが、子供の部屋との認識も薄かった。
「離れ」や「4.5畳のへや」が子供室として使われた。(昭和40年代まで使われていた住宅)
http://www.apssk.com/meru/kekanmm54ph1.html#B
終戦後、親の権威がなくなるのと同時に、平等の思想が受け入れられ、
子供に対する躾の考え方が崩壊し、自信を持って躾が出来る家庭がなくなり、
少子化に伴い子供室がどんどん個室化していったのが現代の住まいの造られ方である。
さらに、親には子供が眩しく輝く存在であり、
自分のやれなかったことを実現してもらう対象であったり、
自分たちの苦労をさせたくないと考える対象にもなっていた。
したがって、躾も甘くなり子供の言うことを何でも聞いてしまう親が多くなり、
そのような親子関係では、個室を欲しがる子供に勝てず、
勉強部屋との理屈で子供室を与えてしまっていた。
子供に対する躾と子供室のあり方は切り離せない関係にあるのだが、
わが国の現状は躾が疎かになり、子供室だけが一人歩きしている「住まい」造りが続いており、
その弊害が社会現象に現れてきている。ニートやパラサイトシングル現象もそうであり、
小学生や中学生が痛々しい事件を起こし、離婚が増え、親までも殺してしまう
殺伐とした社会現象を起こした原因の一端は、閉鎖され個室化した子供室にあった。
この悪しき社会を変革するのもまた「住まい」のなかの子供室から考え直さなければならない。
子供室を日本の伝統である開放性の高い「住まい」にすることで、
親子関係や家族の絆が自然と保たれ、楽しく、張りのある、「住まい」となるのだが、
その考え方をこれから提案してゆきたい。
二.開放的な「住まい」に住むと、配慮や創造性が豊かになり、有名校や社会に歓迎される。
先日骨粗しょう症の話を聞いたが、骨を強化するために必要なことは、
カルシュウムの摂取と適度な運動をすることであるとの話があった。
骨の強化に牛乳やほうれん草、ししゃもなどのカルシュウムの多い食材を摂取し、
ジョギングやウォーキングなどの適度な運動をすると良いことは、
一般的常識として知られているが、なぜ運動が必要なのかの理由はあまり知られていない。
運動が必要な理由は、体を動かす部分に負担をかける必要からであり、
骨に負担がかかると人の体はその部分を強化しなければと反応し、
負担がかかる骨の部分にカルシュウムが多く集まり、その部分を強化するそうである。
人の体はこのように、負担がかかることでその部分を自然に強化する方向に働くのであり、
人の精神に関しても常日頃、軽い精神的負担やプレッシャーをかけていることで、
強化されることが解ってきた。
例えば、スポーツの場合、プレッシャーに弱い人が多く、プレッシャーに負けて
普段の練習の力も出せずに、終わってしまう人が多いことはよく知られている。
しかしプロの選手などは、何度もプレッシャーがかかる状況を経験することで、
プレッシャーに打ち勝ち、プロの選手として力を発揮するのである。
ゴルフをする人が多く同じような経験をしているのではないかと思うが、
私のテニスの経験でも、はじめた当初の試合の際には、
練習のとき打てたボールも緊張感で簡単にアウトするような状況が、
経験を積み相手の実力が感じられるようになると、
自然と力まなくなりプレッシャーも感じなくなり、練習通りのボールが打てるようになった。
気持ちに余裕が出ると、練習以上のボールが打てることも経験したが、
練習をサボるとまた不安な気持ちが増えてきて、プレッシャーを感じるようになり、
ボールを普通に打てなくなるような繰り返しである。
精神的な面で考えると、練習の経験と場馴れの経験の2種類の経験のバランスによって、
プレッシャーや緊張感に打ち勝つ精神力が身に付くのである。
「住まい」の中での家族の関係でも同じようなことが言える。
漫然と、一緒に住んでいるからスムーズに行くだろうと考えている方がほとんどだが、
スポーツのように目的があれば練習したり経験をつんだりして、その負担を克服しようとするが、
人間関係の精神的負担(お互いのコミュニケーションを円滑にすること)となると、
目的が見え難くどうすればよいのか判らず、
単純に困ったときにコミュニケーションをはかろうとする。
しかし、いざ困ったときにコミュニケーションをはかろうとしても、難しいことに気づくのである。
普段から自然に家族同士の精神的負担(煩わしさ)に馴染んでいれば、
お互いの精神的負担が体に染み付き、骨に付着するカルシュウムが負担部分を覆いつくすように、
精神的に負担がかかる部分の精神的強化が無意識のうちになされることになる。
精神的な負担を家族がお互いに持ち続けると、相手を気づかい、
またお互いに助け合いを無意識にするようになり、家族の精神的なつながりが強くなり、
外部からのプレッシャーや嫌がらせを跳ね除ける力にもなる。
ここで、なぜ開放的な「住まい」にしておかないといけないのかを考えたい。
人は嫌なことがあると殻に閉じこもる傾向がある。なぜならば、人とのコミュニケーションには、
楽しみがある反面、嫌なこと、気に副わないことも多々出てくる、
人には嫌なことは避けたいとの心理が強く、家族との接触でも避ける傾向になる。
この嫌なことは避けたいとの心理を克服しておかないと、後々家庭内騒動や非行に走ったり、
ニートやパラサイトシングルの傾向がでてくる、さらには麻薬やドラッグ、いじめの対象、
少年犯罪を起こす引き金になるなどの問題に発展しかねない。
家族の中で、嫌なことがあっても克服する訓練が出来ていれば、
もっと大きな集団の学校や、社会に出ても、コミュニケーションが上手くなり、
楽しさを味あうことが出来るようになると同時に、苦難を乗り越える経験が身に付くことになる。
小さな子供の時から、家族が常に顔を合わせる「開放的な住まい」で生活していると、
配慮(精神的負担)や楽しさがお互いに伝わり、
大きくなっても家族関係がスムーズに行くのである。
さらにメリットを上げれば、配慮や気遣いが出来るようになることで、
子供は他人に気を使うことが出来るようになり、機転や応用が利くようになる。
最近の企業はこのような気を使える人を求めているし、
学校も同様に気の利いた人材は後々役に立つので、気を使える人の合格率が高くなってきている。
もう一つのメリットは、コミュニケーションだけでなく、勉強も子供の頃から、
家族のいる居間や食堂ですることで、人がいても集中して勉強する集中力が身につき、
さらに人がいることで一緒に勉強が出来励みにもなるのである。
また、家族のなかで勉強することで、
家族からの励ましなどを精神的負担に感ずる気持ちが克服出来、
受験当日の度胸が付くので普段以上の実力が発揮できることになる。
これに関しても面白い著作がある。「頭がよい子が育つ家」日経PB出版、
(四十万靖・渡辺朗子共著)である。
この本によると、開放的な「住まい」の子供で、
居間や食堂、はたまた「住まい」のいたるところを勉強のアジトにすることの出来る子供は、
難関中学校に入りやすいとの趣旨である。
理由は親とのコミュニケーションが上手くいっているので、
信頼されている感覚が強く、いろんな場所を勉強の場に出来る創造性や
応用性を持つことができるからと言う内容であるが、さらに先ほども述べた精神的負担の克服で、
精神的安定が得られ、受験のときの度胸が良くなることと、他人に対する配慮が出来ることで、
面接などの態度も好ましいものとなり、
気使いが出来る人材なので良い印象を与えられる為だと思っている。
この本の具体例として、子供室の扉を取っ払い、
透明なガラスやアクリルにしたり、ブラインドやカーテンにするのがよいと載っているが、
これには大賛成である。大分昔から同様のことを申し上げていたし、
ずいぶん昔から子供室の弊害については、色々の人が語っているのだが、
今回のような実証が少なかったこともあり、一般的に受け入れられてこなかった。
この著作は少し宣伝くさいところもあるのだが、開成、麻布、慶応などの
有名中学合格者の「住まい」の開放度を調査し実証しているところが興味深い。
今回は以上です。
次回をお楽しみに!
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