◇◇「住宅の瑕疵保証とはなにか?」◇◇
◇◇◇「住宅の瑕疵保証とはなにか?」
present by APSS
朽木 醒 です。
今回は、号外として、瑕疵保証に関してのメールが来ましたので、
瑕疵保証についてと、関連して工事の第三者検査について、述べたいと思います。
まずは、自分で建てた住宅を心配して、寄せられたメールからです。
メルマガ読者のAと申します。興味深く、メルマガを拝見しています。
実は我が家は2000年の5月に新築受け渡しで、住み始めました。
(4年になります)当時の工務店は、2003年に廃業していました。
鉄骨住宅なのですが、屋根に上がってみると、
少し、浮いたようなところがあったり、
水がたまっていたりして、当時の工務店は、きてくれないので、
別の建築会社に頼んで、修理してもらいました。
結局何十万もかかったのですが、修理してもらった建築会社は、
「10年保障があるのだから、保証書をもらいなさい」といわれました。
当時、10年保障が始まったばかりでしたが、当時の工務店は、
「連絡してくれれば、すぐに工事に来ます。」
ということで、保証書は、発行してくれませんでした。
当時の工務店は、廃業しているのですが、4年経った現在でも、
「10年保証書」は、発行してもらえるのでしょうか?
また、この「10年保証」は、工務店がどこかに登録して、
いなければ発行できないものだったのでしょうか?
それから、当時の工務店に、いくらかを請求できるのでしょうか?
上記メールの回答です。
さて、お尋ねの件ですが、
2000年5月の受け渡しとなりますと、品確法の10年の瑕疵担保に
相当するか、微妙なところです。
契約条件がどうなっているのかが、問題なのですが、
一般的には、建売のような売買契約の場合は、品確法が適用されますが、
請負契約による住宅の場合は、2000年3月31日以前の
請負契約の住宅は、品確法が適用されません。
どうなっているのかは、契約書によります。
また、工務店が廃業だそうですので、建物の責任を持つ会社も
無くなっているのではないかと思います。
責任会社がない場合には、瑕疵責任を果たすところが無いことになり、
実質的に、建て主が今後補修の費用を持つ必要が出てきます。
品確法適用内だとしても、責任会社の消失は同じことになります。
もし、施工会社が建築の請負をやめただけで、
会社自体は存続しているのであれば、責任は追及できると、
思いますが、弁護士等と相談し早めに手を打つ必要があります。
品確法の10年瑕疵保証書の件では、工務店や建設会社が、
信頼獲得や範囲を明確にするために、出しているので、
保証書があっても無くても法律的な効力は同じです。
Aさんの件では、明らかに雨漏りがあったのでしょうか、
又は同等程度の不具合が有ったのでしょうか?
品確法適用内だったとしても、雨漏りや基本的構造部分のみが
10年保証の対象ですので、浮きや水溜り程度ですと、
対象外と考えた方が良いでしょう。
ようするに、十分雨漏りしない施工であったのに、
勝手に直したと判断される場合が多いのです。
私のHPに何度も書いてありますが、後で心配するのは、
工事のときの検査をどうするかの考え方が大切なのです。
工務店だけによる設計・施工ではなく、
設計事務所や第三者的な検査をすることで、
施工完了後も安心できるかどうかと言うことなのです。
Aさんの件では、文面で見る限りでは、
施工した工務店はもう存続してい無さそうです。
費用を施工会社に負担してもらうことは、不可能な気がします。
相手が存在したとしても、弁護士等に取り立ててもらうと、
結構費用が掛かりますので、それほど、メリットが無さそうな気がします。
今一度、瑕疵の内容をよくチェックし、重大な瑕疵なのか、
品確法にあたるのか、費用はどのくらいかかり、何を直したのか、
今後どのような瑕疵が出てくる可能性があるのか?
等々を点検してみてください。
今後建物がどうなりそうかに重点をおいて、ご検討ください。
上記のAさんの返信です。
ご丁寧に、しかも分かりやすく、ご説明してくださって、
ありがとうございます。
我が家の場合は、雨漏りはありませんでした。
でも、水溜りがあったので、これは大変と、思ったのです。
おっしゃるように、廃業した工務店に、10年保障を請求、
また、費用の一部を請求するのは、無理なのでしょうね。
これから、近い将来、何もないことを祈るほかないのでしょうね。
本当に、ご丁寧にありがとうございました。
少し解説を加えます。
上記Aさんの場合は、施工会社が廃業していなくても、瑕疵保証の範囲に
該当いたしません。
10年保証に該当する部分は、屋根や外壁から雨漏りがある場合と、
基本的構造に欠陥がある場合に限定されています。
(10年保証に該当する部分の図は下記をクリック)
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/gif/hinzu225.gif
「10年保証該当部分図」
その他の部分は、契約書で記述してある場合には、
保証の範囲に入りますが、一般的には長くても二年しか保証しないのが
実際の契約では多くなっています。
最近、20年保証とか30年保証とかを、売り物にしている、
ハウスメーカーがありますが、そのようなハウスメーカーの契約書を見ると、
5年又は10年毎の、有償のメンテナンスを条件に入れています。
何のことはない、メンテナンス工事も契約しているようなものです。
工事の問題点があった場合でも、判らないうちに直して、
後で経年変化部材として、費用を請求することも出来ます。
20年、30年保証が悪いと言うのではありません。
施工時期に信頼できる人間関係があり、その信頼の上で
「住まい」を造られることが、本来の「住まい」造なのです。
また、住宅展示場が沢山ありますので、車と混同し、
同じものが出来るのなら安い方が良いとの考えから、
実際の底値はいくらだと聞く人が時折いますが、
住宅の場合、そのような考え方は、問題を起こす原因にもなります。
車のような既製品でも、昨今騒がれている三菱自動車の
リコールのように、問題を隠して消費者に
責任を押付ける企業があるのです。
いかに、施工現場の人間関係が信頼できるかが大切なのが判ります。
大企業だから、有名企業だから安心できるわけではありません。
現場を直接見ることが出来る人が、信頼出来、さらに、
施工企業外のフリーな立場でチェックできる人がいるかなのです。
車を作っている工場だと、仮定してみると、不良品を出さない為には、
会社の為を思う検査員は検査が甘くなりますが、
消費者に目を向けている検査員は厳しい検査をし、
それが世の中に役に立つと考えています。
したがって、設計や検査などにたずさわる人は、
自由な立場ならば自由なほど良いのです。
建売住宅を買うのであれば、造った企業の信頼度が重要ですが、
設計から施工までするのであれば、設計者、現場監督、
棟梁等の信頼度が非常に大切になるのです。
また、「住まい」を造る場合の注意を記述しましたが、
不測の事態でハウスメーカー等に頼んでしまい、
現場でのチェックを自分でやらなければいけない人もいるはずです。
その人達のために、私共で
自分でチェックするための、「写真撮影検査マニアル」を制作致しました。
これを、無償で提供いたします。
設計事務所として、職能での貢献ですので、
使用者が責任をもってお使い下さい。
以下をクリックすると、
「写真撮影検査マニアル」をダウンロードできるサイトになります。
クリックが出来ない場合は、アドレスをお使い下さい。
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/sannsya/sannsya1.html#J
「写真撮影検査マニアル」サイト
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