今回は住宅性能表示制度の中で、表示事項と呼ばれる住宅の性能を標準化
するための項目の後半部分E空気環境、F光・視環境、G高齢者等への配慮、
H音環境を個別に見て行くことにします。
E空気環境に関する住宅性能表示基準 表示の項目及び方法(等級など) 項目等級等の内容 E-1ホルムアルデヒド対策 室内の内装材等からのホルムアルデヒドの放散量を少なくする対策(現在のところ特定木質建材「パーティクルボード、MDF、合板、構造用合板、複合フローリング、集成材、単板積層材等」を使用する場合に適用):ホルムアルデヒドの放散量の少なさの等級 等級4 ホルムアルデヒドの放散量が少ない(日本工業規格のE0等級相当以上又は日本農林規格のFc0等級相当以上)程度 等級3 ホルムアルデヒドの放散量がやや少ない(日本工業規格のE1等級相当以上又は日本農林規格のFc1等級相当以上)程度 等級2 ホルムアルデヒドの放散量がやや多い(日本工業規格のE2等級相当以上又は日本農林規格のFc2等級相当以上)程度 等級1 等級2に満たない程度 E-2全般換気対策 住宅全体で必要な換気が確保出来る対策:「常時計画機械換気」、「常時計画自然換気」、「その他」の対策のいずれかを明示 E-3局所換気対策 換気上重要な特定の部屋の換気方法:「機械換気設備」、「換気の出来る窓」、「なし」の方法のいずれかを明示
E空気環境に関する住宅性能表示基準について
住宅の室内環境は日常生活で発生する埃や水蒸気、二酸化炭素、殺虫剤等の化学物質、建築材料や家具等から発生する化学物質等で悪化する傾向にあります。
化学物質の中には生活者が直接被害に遭う物質や、次世代に影響が出る物質もあります。
しかし、室内の空気に微量に含まれる化学物質の濃度は、温度、湿度、気流、気密性建材の種類、家具、殺虫剤、防腐剤等多用な要素に影響されるため、住宅の設計段階で予測することは極めて困難な状態です。
このため、空気環境に関する性能表示基準では、建材のホルムアルデヒドの使用量の少ないものと換気対策や換気の方法によって評価しています。
F光・視環境に関する住宅性能表示基準 表示の項目及び方法(等級など) 項目等級等の内容 F-1単純開口率 居室の窓等開口部の面積の床面積に対する割合の大きさ(○○%) F-2方位別開口比 東西南及び天上の各方位について(○○%)
F光・視環境に関する住宅性能表示基準について
住宅室内での生活では明るさや日照を確保することは、住宅設計上から必要なことです。
建築基準法では最低限の開口部の確保を義務付ていますが、日照をも考えに入れた、方位別の評価を単純開口率と同時に取り入れたのが、光・視環境の評価方法です。
G高齢者への配慮に関する住宅性能表示基準 表示の項目及び方法(等級など) 項目等級等の内容 G-1高齢者等配慮対策等級 住戸内における身体弱化に対する配慮のため必要な対策の程度 等級5 身体機能の低下に対して移動時の転倒や転落防止をするための特に余裕のある対策が講じられており、改造をせずに介助式車椅子使用者が基本的な生活のために必要な範囲内で特に余裕のある対応を可能とする対策が講じられている程度 等級4 身体機能の低下に対して移動時の転倒や転落防止をするための余裕のある対策が講じられており、改造をせずに介助式車椅子使用者が基本的な生活のために必要な範囲内で余裕のある対応を可能とする対策が講じられている程度 等級3 身体機能の低下に対して移動時の転倒や転落防止をするための基本的な対策が講じられており、改造をせずに介助式車椅子使用者が基本的な生活のために必要な範囲内で基本的な対応を可能とする対策が講じられている程度 等級2 身体機能の低下に対して移動時の転倒や転落防止をするための基本的な対策が講じられている程度 等級1 建築基準法に定める移動時の安全性を確保する対策が講じられている程度
G高齢者への配慮に関する住宅性能表示基準について
加齢、病気、怪我等によって身体機能が低下した場合、日常生活の動作が負担になったり、転倒などで事故を招く場合もあります。車椅子の使用や介護者が必要になった時は、スペースが広く必要になります。あらかじめ住宅の部屋の配置、廊下の広さなどの配慮をすることが有効な対策です。
高齢者などに配慮した工夫は、必要になったとき簡単な工事で対応出来るものもありますが、廊下の幅や部屋の広さなど、変更するのに改修工事が必要になる部分もあります。
したがって、新築時点での対応が重要で、車椅子等が必要時点でも大幅な改修無しに住宅を使えることを評価したものです。等級3が住宅金融公庫の「バリアフリータイプの仕様」程度に相当します。
評価内容としては、部屋の配置、段差の解消、手摺の設置、通路・出入口の幅員、階段の安全性、寝室、便所、浴室などが対象となります。
H音環境に関する住宅性能表示基準 表示の項目及び方法(等級など) 項目等級等の内容 H-1透過損失等級(外壁開口部) 居室の界壁の開口部に使用するサッシュに関する空気伝搬音の遮断の程度 等級3 特に優れた空気伝搬音の遮断を可能にする程度(日本工業規格のT-2等級相当以上) 等級2 優れた空気伝搬音の遮断を可能にする程度(日本工業規格のT-1等級相当以上) 等級1 等級2に満たない程度
H音環境に関する住宅性能表示基準について
住宅の立地に因っては外部から室内に侵入するする騒音や室内から漏れる生活音等を遮断することを求められることが有ります。
住宅の場合、外壁の開口部に遮音性の高いサッシュを用いる等の措置が必要になります。住宅外壁の開口部に関する音の伝わりにくさ(空気伝搬音)を評価します。
注)音環境は選択項目であり、完成した住宅室内で聞こえる音の実測結果について保証するのではなく、あくまでも設計図書の段階で予測可能な範囲での評価方法です。
◇◇◇住宅性能表示制度の全体に対する感想◇◇◇
住宅の性能評価項目に付いて、戸建て住宅を中心に項目別に内容を記述してきました。
この性能評価の申し込み方法を再度記しますと、
@設計住宅性能評価をしてもらうことを
前提に設計をしてもらい、指定住宅性能評価機関に申し込み、設計住宅性能評価をしてもらう。
A設計住宅性能評価書付の新築住宅の工事契約を結ぶことで、設計住宅性能評価書に
書かれた内容を実現する為の工事契約が成立します。
B工事期間中に指定住宅性能評価機関が4回ほどチェックに来て合格すれば建設住宅性能評価書が交付されます。
以上の流れになりますので、設計を注文するときか設計期間中に、住宅性能評価項目のそれぞれの中でどの等級を選ぶかを決めておかなくてはなりません。
したがって設計施工の契約はとても結び難いのですが、気の利いたハウスメーカー
などは、それぞれの項目の等級に因って値段が上がるようなオプションの項目とし契約をするところも出てくるとおもいます。
また、規格住宅の場合は事前に評価を受けることで、設計評価部分が可能になりますので、規格住宅として提案するところも出てくるでしょう。この場合はセミオーダーは出来ないはずです。
要するに、ハウスメーカーの値上げのための材料に使われる可能性が高いのです。
この制度を使用する場合には、じっくり勉強して、項目別にどの程度の等級が自分の住まいに相応しいのかを把握する必要があります。
項目の中には、構造の安定の項目と光・視環境の項目の様に相反する関係になっている項目も有ります。
(開口を大きく取ると、構造的安定を欠く方向に向かってしまいます。壁量が少なくなるから当然です。)
設計事務所に頼む場合には、施工契約は設計が出来てからですので、設計段階で、じっくり一緒に勉強しながら、設計を見て、性能評価項目の等級を決めることが出来ます。
ただし、時間と費用がかかると思って下さい。
また、住宅本体の契約をすることが目的のハウスメーカーに頼む場合は、じっくり勉強をしておいた後でないと余計な項目の等級を決めてしまうことになりかねません。
このシステムは欠陥住宅を無くすためや、性能確保の目安としての機能を持っているとは思いますが、必然的に、このシステムを使用する場合は、消費者が性能の選択をすることになり、消費者自身が判断することが必要となるのです。
したがって、ていの良い責任回避とも考えられます。
どこの責任回避かと言いますと、役所及び検査機関と施工会社の責任逃れが可能になります。
検査を4回もやりますが、基本的に図面の通りに出来ているかどうかをチェックすることが目的です。
図面の通りに出来ていれば、最終的に性能が出るかどうかはよく判らないと考えているのが現状です。
その隠された内容を代弁しているのが、「この制度は完成時の性能であり引渡以後の性能低下が起きないとの保証はしていない」との部分なのです。
要するに、現在のところ引渡後1、2年の期間で性能低下が起こっても、全く保証されるものでは無いと言うことなのです。
どの性能を取るかの判断をさせ、図面を造って評価機関に持って行き評価機関で性能評価を受けさせます。
図面の段階から、消費者の判断した図面を評価するのであって、独自に評価するのでは無いのです。
このシステムは、設計事務所に多大の負担がかかります、検査の費用はあまり高くは有りませんが、設計の手間が相当増えますし、良い仕様の性能を選べば当然施工費用にも跳ね返ります。
消費者の為になることは、当然ですがその為には消費者が、設計事務所と同程度の知識と判断力が必要になり、その判断に責任を持たなくてはならないシステムだと言えるのです。
最初にも申しましたように、瑕疵担保期間の10年義務化はとても良い法律だと言えますが、住宅の性能表示制度は役所の天下り先の確保と、規各住宅を普及させるためのシステムとして考え出されたのではないかと思えてしまいます。
十分検討して、本当に自分の住宅に合った方法で「住まい造り」をなさるように助言致します。
今回は以上です。
ありがとうございました。
次回の予定は
さらに、性能表示制度の問題点に付いてのよていです。
本年のMMの配送は今回で終わります。本年のご購読感謝致します。
明年も宜しくお願い致します。
|