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◇◇「住宅性能表示制度」−02◇◇

◇◇◇                present by APSS・住まい研究所


APSS・住まい研究所の 菊池 と申します。
「品確法で住まいは守れるか?」のNO.07です。



(第三者検査については下記参照して下さい。)
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/sannsya/sannsya1.html)
 今回は住宅性能表示制度の中で、表示事項と呼ばれる住宅の性能を標準化
するための項目を個別に見て行くことにします。
項目としては、
@構造の安定、A火災時の安全、B劣化の軽減、
C維持管理への配慮、D温熱環境、E空気環境、F光・視環境、
G高齢者等への配慮、H音環境の9つの「項目別性能」があります。
これらの項目にはそれぞれ細目があり、その中で等級が決められています。等級は最大5段階に分かれ、数字の大きな等級が、一番良い仕様の等級となっています。

@構造の安定に関する住宅性能表示基準
表示の項目及び方法(等級など)項目等級等の内容
@-1構造躯体の倒壊防止(耐震等級)地震により生じる力に対する構造躯体の倒壊のしにくさ
等級3建築基準法に定める極めて大きい地震力(数百年に1度程度発生する地震により生じる力)の1.5倍の地震力に対して倒壊しない程度
等級2建築基準法に定める極めて大きい地震力の1.25倍の地震力に対して倒壊しない程度
等級1建築基準法に定める極めて大きい地震力に対して倒壊しない程度
@-2構造躯体の損傷防止(耐震等級)地震により生じる力に対する構造躯体の損傷の受けにくさ(大規模な修復工事を要する損傷)
等級3建築基準法に定める中程度の地震力(数十年に1度程度発生する地震により生じる力)の1.5倍の地震力に対して損傷しない程度
等級2建築基準法に定める中程度の地震力の1.25倍の地震力に対して損傷しない程度
等級1建築基準法に定める中程度の地震力に対して損傷しない程度
@-3耐風等級(構造躯体の倒壊及び損傷防止)風により生じる力に対する構造躯体の倒壊のしにくさ及び、
構造躯体の損傷の受けにくさ(大規模な修復工事を要する損傷)
等級2建築基準法に定める極めて大きい風による力(500年に1度程度発生する風により生じる力)の1.2倍の風に対して倒壊せず、
建築基準法に定める中程度の風による力(50年に1度程度発生する風により生じる力)の1.2倍の風に対して損傷しない程度
等級1建築基準法に定める極めて大きい風による力に対して倒壊せず、
建築基準法に定める中程度の風による力に対して損傷しない程度
@-4耐雪等級(構造躯体の倒壊及び損傷防止)多雪地帯のみ屋根の積雪により生じる力に対する構造躯体の倒壊のしにくさ及び、
構造躯体の損傷の受けにくさ(大規模な修復工事を要する損傷)
等級2建築基準法に定める極めて大きい積雪による力(500年に1度程度発生する積雪により生じる力)の1.2倍の積雪に対して倒壊せず、
建築基準法に定める中程度の積雪による力(50年に1度程度発生する積雪により生じる力)の1.2倍の積雪に対して損傷しない程度
等級1建築基準法に定める極めて大きい積雪による力に対して倒壊せず、
建築基準法に定める中程度の積雪による力に対して損傷しない程度
@-5地盤又は杭の許容支持力等およびその設定方法
■許容支持力等
地盤:○○(KN/u)
杭:○○(KN/本)
その設定方法は地盤調査の方法その他判断に用いた根拠を明示する。
地盤又は杭に見込んでいる常時作用する荷重に対して抵抗しうる力の大きさ、地盤に見込んでいる抵抗しうる力の設定の根拠となった方法
@-6基礎の構造方法及び形式等
■直接基礎
○○造△△基礎
■杭基礎
杭種:○○
杭径:△△cm
杭長:○△m
直接基礎の構造と形式または杭基礎の杭径及び杭長等

@構造の安定に関する住宅性能表示基準について
強い地震、強風、多雪に対しての構造的強度を向上させるための等級です。倒壊と損傷防止の観点から評価しますが、評価の対象は構造躯体部分です。
評価方法としては構造計算などで確認しますが、高度な計算を行う場合と簡便な方法を用いる場合が有ります。

一般に簡便な方法(戸建て住宅などで行う壁量計算等)ほど、余裕を見込んだ設計となり、柱や梁の断面が大きくなります。
経済性を重視する場合には高度な計算を用いて経済的な断面を求めることとなりますが、木造の住宅であまり精密な設計をしてしまいますと、木材材質の均一性を求めなければならなくなり、経済的で無くなるばかりか、かえって高いものに付くことが有ります。

構造の安定性には地盤や基礎も重要な部分ですので、地盤や基礎の形状、地盤耐力等も測定し表示することが必要となります。

木造戸建て住宅の場合の評価方法は、従来からの壁量チェックに加え、壁の配置の釣り合いの検討と耐力壁の接合部の耐力の確保、各階床や基礎の仕様等も検討事項に含まれます。

A火災時の安全に関する住宅性能表示基準
表示の項目及び方法(等級など)項目等級等の内容
A-1感知器設置等級自住戸火災時における早期の感知のしやすさ
等級3自住戸火災のうち、居室及び台所で発生した火災に対して、住戸全般にわたり早期の感知に有効な措置が講じられている程度。
等級2自住戸火災のうち、居室及び台所で発生した火災に対して、当該室付近で早期の感知に有効な措置が講じられている程度。
等級1等級2に満たない程度
A-2耐火等級(延焼の恐れのある部分)延焼の恐れのある外壁等に関わる火災時の加熱に耐える時間の長さ
等級3耐火時間が60分相当以上
等級2耐火時間が20分相当以上
等級1等級2に満たない程度

A火災時の安全に関する住宅性能表示基準について
火災時の安全性とは、住宅内や近隣の火災が発生した際に、人命が守られることと財産が守られることです。

自住戸火災については感知器の設置個所により等級が異なります。近隣火災の場合には外壁や屋根などが燃え出す時間で等級が異なっています。



B劣化の軽減に関する住宅性能表示基準
表示の項目及び方法(等級など)項目等級等の内容
B-1劣化対策等級構造躯体に使用する材料の交換等大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策の程度
等級3通常規定されている気象条件及び維持管理条件下で、おおむね75〜90年まで伸長するため必要な対策が講じられている程度
等級2通常規定されている気象条件及び維持管理条件下で、おおむね50〜60年まで伸長するため必要な対策が講じられている程度
等級1等級2に満たない程度

B劣化の軽減に関する住宅性能表示基準について
住宅に使われている建築材料は経年変化により、また水分や大気の汚染物質により、腐朽や腐食したりします。これらの劣化を遅らす対策を評価する方法です。

木造戸建て住宅の場合等級2が住宅金融公庫の耐久性に関する仕様程度を見込んだ考え方になっています。

具体的な評価方法は土台、外壁の防腐・防蟻処理、地盤の防蟻処理、浴室廻りの防水処理、基礎の高さ、床下の換気・防湿処理、小屋裏の換気措置等が検討されます。



C維持管理への配慮に関する住宅性能表示基準
表示の項目及び方法(等級など)項目等級等の内容
C-1維持管理対策等級専用の給排水管及びガス管の維持管理(清掃、点検及び補修)を容易とするため必要な対策の程度
等級3清掃口や点検口等が設けられ、維持管理を行うための余裕のある対策が講じられている程度
等級2維持管理を行うための基本的な対策が講じられている程度
等級1等級2に満たない程度

C維持管理への配慮に関する住宅性能表示基準について
住宅には構造躯体など耐用年数が長い部分と、設備や配管、仕上げ材料など比較的短期間で損傷や汚れで補修や交換が必要な部分が存在します。

このうち短期間で補修や交換が必要になる部分に、その交換や補修がし易い配慮がされているかどうかを評価しています。



D温熱環境に関する住宅性能表示基準
表示の項目及び方法(等級など)項目等級等の内容
D-1省エネルギー等級住宅の断熱化等による冷暖房に使用するエネルギー削減の大きさ
等級4特に大きな削減が得られる程度
等級3大きな削減が得られる程度
等級2軽微な削減が得られる程度
等級1等級2に満たない程度


D温熱環境に関する住宅性能表示基準について
住宅室内が快適にすごせるためには冷暖房が不可欠になっていますが、この冷暖房のエネルギーを少なくするための断熱材の設置や断熱サッシュを取り付ける措置を評価します。

木造戸建てで住宅金融公庫の省エネルギータイプの仕様が等級4と同等で、同割り増し融資基準の省エネルギー住宅次世代型が等級5に相当します。評価対象部分は断熱材と気密化の仕様の他に断熱サッシュの使用や日射の遮蔽等の対策が検討されます。



 他の4項目は次回にまわしますが、ここまで書いてきて性能表示制度の感想を書きます。

一般の住宅の建て主が、この性能表示制度のメニュー中から自分の必要とする性能を選び出すのは容易なことではないとの感じがひしひしと伝わります。よっぽどの勉強をしないと折角住宅の性能を向上させようとして、余計な性能を向上させ費用ばかりが高くなるとのケースも沢山出てきそうです。

私などのように30年近くも建築に携わってきた人間ですら、何を選んだら良いのやら迷いそうなメニューと言えます。

一寸お役所の悪口になりますが、責任を建て主に押しつけるための方法ではないかとの穿った見方も出来ます。

品確法は、10年の基本構造部分の瑕疵担保責任はとっても良い法律の部分だと思います。しかし、性能評価の部分に関しては、下手に最高評価ばかりを選んで設計してもらいますと、設計費用も、施工費にも大いに跳ね返ってくる可能性を秘めています。さらに、評価機関にも支払う費用が必要になります。

新聞や雑誌などでは、評価機関の費用が安くなっているので、非常に良いシステムのように書いているものが多いようですが、設計と施工の費用のことについてはほとんど触れられていません。

私は建築の設計専業であり、施工にも、役所にも、片寄らない本来の第三者的立場で考えられますが、評価機関が安い費用で評価を出来るようにするためには、設計部分が評価機関の手足的な役割を果たすことになります。そのため設計費用はどうしても上がらなければ出来ないと思われます。
施工費用に関しても、今までの建築自身が建築基準法をクリアーすることを基本としていました。その時期に話題になっている部分や他社との差別化として仕様をアップしていた部分も有りますが、基本的には基準法のクリアーでしたので、最高ランクばかりの選択は当然コストアップに繋がります。

今回は以上です。
ありがとうございました。

 次回の予定は
E空気環境、F光・視環境、G高齢者等への配慮、H音環境の4つの
「項目別性能」についてと、品確法についての感想−2の予定です。


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