◇◇「第三者検査を依頼してきたAさん」−02◇◇
◇◇◇ present by APSS・住まい研究所
APSS・住まい研究所の 菊池 と申します。
「品確法で住まいは守れるか?」のNO.05です。
「基礎が不安で第三者検査を依頼してきたAさん」−2
(第三者検査については下記参照して下さい。)
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/sannsya/sannsya1.html)
さて、明くる日、Aさんと駅で待ち合わせをし、不動産屋に伺いました。
Aさんは1人ではなく、社会人の娘さんと息子さんが一緒に来られましたが、
工事に疑問を持っているのはAさんだけのようでした。
不動産屋さんは、最初から迷惑そうな様子でしたが、
工事の発注先(下請け工事会社)の社長と不動産会社の担当の部長が
話し相手として、出てきました。
私がAさんが来られた経緯を話し、工事に不安があることを話すと
工事会社の社長はものすごい勢いで怒りだしたのです。
怒りの内容は、私が指摘した捨てコンクリート無しの工法のことでした。
曰く、「捨てコンクリートをせずにベタ基礎を打つ工法もあるんだ、
俺は職人だから変なことはしない」との言い訳でしたが、
なんら論理的なものではありませんでした。
私の言い分は、「敷地の地面を掘らず、地盤を確認せずに工事をしているので、
非常に不安がある。
工事方法にも荒っぽい部分が見受けられ不安感を取り去ることが出来ない。
最低限地盤の地耐力を測定して、皆で安心をすることがこれからの工事にも
良い方向ではないか。
幸いなことにベタ基礎で施工しているので地耐力は2t/uあれば基本的に
安心できる値であり、スエーデン式サウンディング試験(住宅金融公庫も推奨)
ならば簡便に安価に地耐力の確認が出来るので(関東地方で赤土が確認できれば
5t/uの地耐力は十分発揮出来る)、地面が十分に締まっていた
とのことならば、2t/u程度は出る可能性はあるので、まず地耐力試験をして
建て主と施工側両者と、さらにコンサルタントの私も含めて安心を得ましょう。」
との提案をしました。
ここで、不動産屋の部長が、「地盤は絶対に大丈夫です、保証します。」
との発言をしてきたのです。
私は再度、「何の根拠もなくそのようなことを言うのはおかしい、
現在は品確法も施行され、基礎は10年間保証しなければいけない部分です。
皆の安心の為に地耐力試験をして下さい。」との発言を繰り返しました。
やっと不動産会社側は折れて、「では試験をやりましょう。
しかし試験の費用は契約金額に含まれていませんので別途となります。
また、貸室部分の水道メーターの費用をみていなかったので、これは追加でなく
契約工事費用に含みましたので、試験費用までの余裕はありません。
工期も工事を一時中断して試験の結果を待ってから再開したいと思いますので、
工期は大分遅れます。」との発言に至りました。
この時点で再度Aさんに判断を預けるかたちになってしまいました。
私の判断では費用が追加となり工期が遅れても安心を得てから施工した方がとの
助言ですが、費用や工期はAさんの予定があり、私の判断だけで決定するわけに
行かないからです。
Aさんはどうも追加の費用が気になると見えて、息子さんと娘さんに
「どうしたものだろう」と聞きましたが、息子さん達は「そちらで決めて」との
返事です。
と言っているのだから、工期も遅れるし費用もかかるならば
あまり試験をしたくないのですが、大丈夫でしょうか?」とまた私にた
相談してきました。
私も「どこか削れるところを削って費用を捻出してみたらどうですか」と、
提案したのですが、図面が平面図、立面図、断面図程度しかなく見積が
どんぶり勘定ですので、削るところを見つけられません。
住宅の仕上げ部分は息子さん達が、手を付けて欲しくないと言っています。
相談に乗って2日目では全てを見通して判断を付けるのは無理なことです。
しかし、工事は進んでしまいます。
そこで、基礎の件は一番大事ですが、「不動産会社と工事会社とが10年間保証
するとの発言なので、責任もってもらえるならば、地耐力試験は、省きましょう」
との発言をして、折れることにしました。
建て主が困った時の助言なのですが、費用や工期の点が絡みますので、
建て主の意向を無視することは出来ません。さらに不動産会社と工事会社が
協力してくれる考え方が必要です。
したがって、責任をはっきりさせ、10年間の保証を確約させました。
さらに今後の工事に対し、工事会社からは「これからずーっと見てくれるとの
ことなのでプレッシャーなります。」との発言もあり、
今後の工事が、より慎重に気を使ってやってもら得る方向が見えて来ましたので、
一応の成果として矛先を納めたわけです。
この時点で工事用の図面をもらい、スケジュールも確認しこの日の役割を
終えました。
一般的に、このような工事会社の建物に、欠陥事故が多いものなのです。
基礎から、手抜きと思われる砕石の締め固め無し、捨てコンクリート無し敷地の
地盤の耐力にのみ頼った工法は、一寸した手違いや判断ミスにより
事故に繋がります。
当然、施工費用も大分安く請け負わされているみたいですし、詳細な図面は
何もありませんでした。
どこが難しいところで、注意しなければいけないのか、全く分からないと言って
良い状態の工事だと見えた次第です。
その3日後、Aさんから電話がありました。
話の内容は「あの基礎で大丈夫と言うことでしたので、上屋の方も大丈夫だと
思います。一寸お金の必要が出てきましたので、上の方を見ていただく費用が
無くなってしまいました。」との断りの電話でした。
私は「大丈夫などと言っていません、不動産会社の10年間の保証を確認した
でけです。
上屋はもっと分かりにくい部分が沢山ありますが、本当によろしいのですか?」
と答えました。
Aさんは「不動産会社が10年間の保証してくれるので安心しました。」
との返事でした。
おおかた、私のチェックを受けると「どんどん費用がかかる」とでも
不動産会社に言われたのでしょうか?
10年間の保証との品確法が私などの目から見ると「逆の意味での安心」
との作用で働いた例ではないかと思います。
Aさんが本当に安心出来ていれば良いのですが?
「第三者検査を依頼してきたAさん」は終わりです。
ありがとうございました。
今月に施行されました、「日本住宅性能表示基準」の中の
9つの「性能項目」についてを次回に予定します。
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