◇◇「住宅の性能表示制度−1」−03◇◇
◇◇◇ present by APSS・住まい研究所
APSS・住まい研究所の 菊池 と申します。
「品確法で住まいは守れるか?」の3回目です。
(住宅の性能表示制度の内容は?)
平成12年4月1に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」
(通称:品確法)が施行されました。
今回は、もう一つの柱となっている、「性能表示制度」についてです。
但しこの制度は任意の制度で強制ではありません。
建て主が選択出来ると共に施工者サイドにも選択の余地がある制度です。
品確法の「性能表示制度」には、
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/sannsya/hinkaku1.html
@住宅の性能の根拠が曖昧であり、メーカーや建設会社によって自由に表示を
していましたが、この制度を使う住宅に限って客観的な性能表示が出来るものです。
住宅の基本的な性能を示す共通のルールを建設大臣が示し、
どの施工者が施工しても同じ性能が得られることを目的としています。
Aこの制度を利用して評価を受けた住宅では、トラブルが発生した場合に
裁判以外の紛争処理体制を整備して迅速に処理することが目的です。
@の住宅の性能の表示と評価の仕組み。
1.「性能表示住宅にしたい」
↓
2.「性能表示住宅を設計する」:設計事務所等に建て主が依頼する。
↓
3.「指定住宅性能評価機関」:設計した住宅の要求の設計内容をチェック
↓
4.「設計住宅性能評価書の発行」:住宅性能評価機関が設計図書の審査後に
↓
5.「性能表示住宅の施工依頼」:住宅施工者に「設計住宅性能評価書」を
付け契約し、「性能表示住宅」として施工
↓
6.「性能表示住宅の施工」:住宅施工者及び設計者に依る監督、監理と
指定住宅性能評価機関の検査を受ける
↓
7.「建設住宅性能評価書の発行」:指定住宅性能評価機関が検査し
合格の場合発行
↓
8.「性能表示住宅のトラブル」:住宅取得者や住宅施工者が
「指定住宅紛争処理機関」へ持ち込み
↓
9.「指定住宅紛争処理機関」:低廉な料金で、迅速かつ円滑に解決に当たる
以上のような流れで利用することが出来るのが性能表示住宅の制度です。
2、3、4が住宅の設計部分での評価で、「設計住宅性能評価」と言い
設計内容を基準に照らし合わせて評価する仕組みです。
この共通の基準は、建設大臣が「日本住宅性能表示基準」との表示すべき事項と
表示の方法を定めた基準を作り、さらに「評価方法基準」では、性能に関する
設計図書の評価方法や、現場検査の方法を定めます。
この住宅の評価を行うのが「指定住宅性能評価機関」と言う役所のOBを
主体とした機関で、設計時には「設計住宅性能評価書」の発行を
また住宅完成時には「建設住宅性能評価書」の発行を行います。
5、6、7が住宅施工時の性能評価の流れで、施工中と完成時に
「指定住宅性能評価機関」から検査員が検査をしに来ます。
検査に合格することで「建設住宅性能評価書」の発行が受けられます。
上記の設計と建設の二つの評価書が揃うことで、完成時の住宅取得者の要求性能
が満たされることになります。
但し、この評価書に示された性能は完成時点での性能の評価であり、その後の
経年変化に対しての性能の低下は保証されません。
8、9が欠陥住宅等のトラブルに巻き込まれたときの処理方法です。
この処理方法が使えるのは、建築基準法に適合していることが条件ですので
設計の評価書を受け、施工途中で設計変更をし、最終的に基準法から外れたり
建設の評価書を受けられない場合はこの対象から外れることになります。
「住宅性能表示制度」はあくまで任意の制度であり、法律で決められた仕組み
ですが、義務となってはいません。
住宅の取得者と供給者がお互いに任意で選択する制度ですので、どちらかが
拒否した場合には利用することが出来ません。
住宅を造る際にどうしても「住宅性能表示制度」で施工したい場合は、
施工者に「住宅性能表示制度」を取り入れる用意のある施工者を選ぶ必要が
あります。
また、この制度は「新築住宅」が対象であり、改修やリフォーム、修繕等の
場合は使用出来ません。
「住宅」の基準は、戸建て住宅、共同住宅、長屋、併用住宅が含まれます。
事務所併用住宅や店舗併用住宅も住宅に含まれます。
この制度利用の利点や問題点。
A.建て主が住宅にどのような性能を必要とするか勉強する必要がある。
B.設計時点と施工時点で検査や評価があり、設計施工共に期間が増える。
C.チェック回数が増えて安全度が増す。
D.設計施工共に作業や書類の量が増え費用が高くなる。
E.費用が変わらない場合、面倒見が悪くなる恐れがある。
F.検査と評価の費用が必要になる
G.以前からの住宅金融公庫の仕様程度のわりにはメリットが少ない。
H.トラブルの時には役立つ可能性が高い。
I.この制度を利用した場合、施工業者の倒産予防の保険が使える。
J.トラブル防止に役立つ制度だが、トラブルを前提の部分が見える。
K.施工途中での変更は期間の増加が大きく負担になる。(ほとんど不可能)
総合的に考えると
トラブル防止を性能評価との観点から進めることを考えた制度ですが、
任意の制度とした点や、完成時点のみの評価など、および腰の部分が足をひっぱる
可能性があり、不安も抱かせる制度である。
性能評価に関しては、完成時点以外保証されないが、基本構造部分の10年間の
義務化に対しては、施工会社の倒産保証をするなど、任意だが多くの人に利用を
促す意図が根底に流れている。役所のOBによる第三者機関の繁栄をも目指した
制度であるが、逃げ道も用意されている制度と思える。
利用に当たっては良く研究して下さるようにお願い致します。
ありがとうございました。
次回は、「日本住宅性能表示基準」の中に9つの「性能項目」があります。
どのような項目がどの程度の性能基準を取り入れることが出来るのかの予定です。
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