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◇◇「高気密高外断熱住宅の科学」◇◇

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02・スパイラルエアー換気システム住宅での健康と住まいの耐久性
 かなり前から外断熱の住宅を提唱してきましたが、具体的な案として
まとまりましたので、提示することにしました。
 外断熱の良さが知らされてから久しいのですが、我が国の住宅には費用や、
馴染みの薄さなど、色々な要素が反映して、ほとんど普及していません。
 外断熱の歴史は浅く、北欧を中心にまだ30年程度しか経過しておらず、不安を
抱く人も少なくありません。
 しかし、ドイツや北欧を中心に、建築の中の住み心地、住環境などを研究する
学問として、建築物理学との研究分野が出来上がりつつあります。
 我が国では、建築学原論との考え方で、建築学の中の一部分でしかなく、あまり
重きを置かない傾向にあります。
 しかし、室内環境が問題になりつつある現状では、室内環境をどの様な状態に
するのかを把握し、それぞれの外部環境に合った室内環境にすることが重要に
なって来ました。
 この、それぞれの外部環境に合った室内環境を考えるのが建築物理学
なのですが、我が国に建築物理学の専門家はほとんどいません。
 そこで、北欧の建築物理学の関係者が諸手を上げて推奨している、外断熱の住宅
を我が国風に改良した
「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」 をAPSS設計事務所として提案しています。

 それでは、断熱材の経緯から考えて見ましょう。
 我が国の4、50年前の建物ではほとんど断熱材は使用されていませんでした。
 土壁と下見板張り等の木製の外壁材で出来ており、土壁と空気層、木の外壁が
断熱の役割を少ししていましたが、ほとんど断熱材との考え方での断熱では
ありませんでした。
 厚い土壁の土蔵造りは夏でも内部がひんやりとし、断熱効果があり、貴重な品を
貯蔵しておく場所として重要な建物でしたが、一般的に断熱材を使用した住宅
と言うのは、ありませんでした。
 したがって、冬は衣裳で温度を取り、「建物は夏を旨とすべし」との格言も
生まれた通り、風通しの良いすかすかの住まいだったのです。
 1960年頃より徐々に断熱材が使われ始め、近年は断熱材の無い建物は、
畜舎や犬小屋程度の言われようになっています。
 このように、断熱材自体の歴史が古いものではなく、断熱材に対する考え方が
まだ研究過程にあります。
 今後は、建築物理学などできちんと研究し、断熱材と室内環境が改善され
建物自体も長持ちする方向で発展して行くことを望んでいますが…。

断熱方法の違いによる長所と短所
内断熱外断熱
費用が安い費用は少し高め
施工が簡易施工性は足場があれば容易
材料が豊富使えない材料もある
内部結露がある内部結露は無い
設備部分での隙間出来る設備部分での隙間ほとんど無し
構造体による分断あり構造体による分断無し
改修・修繕時の配慮大いに必要改修・修繕時の配慮、外壁以外小
内外部の境界曖昧内外部の境界明瞭
構造体耐久性小構造体耐久性大

 我が国では断熱材の使い方は、断熱材を壁の内部に詰め込むいわゆる
「内断熱」が主流を占めています。
 現状でも95%以上が内断熱の建物との統計もあります。
 内断熱は施工のし易さ、安い材料が使用可能なこと等メリットもありますが、
断熱材内部に結露する、壁内部に通気が出来ない等のデメリットも多く、現状では
この内断熱のデメリットをいかに防ぐかが競われているのが状況です。
 高気密との考え方も、このデメリットの解消も合わせて考えられた対策ですが、
いくら高気密にしても、壁内部に室内の空気が入らないようにするのは無理
なのです。電気のコンセントや照明器具と配線配管類は必ず出てきますし、設備
機器や換気口類取付の為に隙間が生じます。これら設備機器を減らすことは、
快適な生活を妨げることになりますので、電気や設備機器は増える傾向にあります。
 さらに、内部の改修や修繕の際にアンバランスが生じたり、高気密を保てない
部分が出来たりします。
 内断熱で高気密高断熱の住宅を「高耐久性住宅」にするのは、無理な話し
なのではなかと考えています。
 
 外断熱にした場合、内断熱の問題点のほとんどが解決します。
 施工性に関しては、外から張るだけですので、足場さえあれば、外断熱の方が
施工し易いとも言えます。ガラスウールの綿のような埃をまき散らすこともありません。
グラスウールは改良されていますが、大工さん達の健康を害しているかも知れません。

 費用の点は、外断熱に使う材のほうが量も多くなり少し高めになりますが、
長期的な考えからすれば安いと言えると思います。
 断熱材が構造材等で分断されることもなく、断熱材の途切れる部分が
出来ませんし、電気や設備機器による隙間もほとんどありません。
 改修や修繕時にも、外壁部分をいじらなければ、気密性や断熱性に気を使う
必要もありません。

 内断熱と外断熱を比較してみると、断然外断熱が有利なことが判ると思います。
さらに、壁の中を半強制的に通気する「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」は、
壁の中や床下に結露や湿気の滞留が起きないので、構造材も仕上げ材も
出来ます。
換気して行くため、常に空気が流れており、シックハウスやアレルギーなどの
原因物質とされている、化学物質やカビ、ダニも換気による効果で、ほとんど
影響が出なくなります。
 このように、シックハウスにも効果があり、高耐久性でエコロジーにも対応
するシステムを備えるのが、高気密高外断熱の住宅と言えるのです。

 断熱材の考え方は、熱を遮る側に付けるのが本来の考え方です。
 住宅の断熱の場合、夏、冬の暑さ寒さを遮断することが本来の目的です。
 室内の環境を維持するのは、付加的な目的なのです。外からの熱を遮断
することが目的だとすれば、当然外部に近い場所に置くべきなのです。
 外部に近い場所に置くからこそ、効率も良くなるのです。
 断熱材の目的から考えると、内断熱は間違った断熱方法ですし、
効率の悪い断熱方法なのです。
 冷凍倉庫など室内の温度を外気の温度に関わらず、一定に保つことが
必要とされる部屋がありますが、これらの部屋の場合は内断熱を使用します。
 この場合の内断熱は目的にかなったものです。
 内部の温度を一定に保つ為には、内部の熱を逃がさないようにすることが
目的となりますので、なるべく室内側で断熱することが効果的な方法と
なりますので、内断熱が効率も良く道理にかなった断熱方法です。
 ただ、冷蔵庫などの内断熱は構造体の間に詰め込む断熱ではなく、構造体の内側に張り付ける、本当の意味での内断熱ですので、お間違えなく。

屋根・壁・土台・基礎部分の詳細図です。
●断熱材は壁部分が防火のため、炭酸カルシュウム発泡断熱材使用(これが一番防火性能も良いのですが、費用が高いため使えない場合も有り)
基礎下部分は発泡ポリスチレン使用としました。
 床下は換気口無し。(基礎はベタ基礎とし、独立束用基礎使用)







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