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「イギリスと日本の家の価値観の違い」
「日本人はブランド品も浪費」
「イギリスは、夫婦の部屋が中心」
「子供の自主性と個性を育てる住宅」
「イギリスには2世帯住宅はほとんどない」
「イギリスを好きな人が日本人にも多い」
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◆ 健康と住まい−39◆◆◆
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◆◆◆◆ present by apss
朽木 醒(くちき あきら)と申します。
健康と住まいの39回目になりました。
39・イギリスの住宅事情
☆ 一寸期間が空きましたが、今回は世界に目を向けて、
イギリスの住宅と家庭事情についてです。
☆イギリスと日本の家の価値観の違い
日本の家は仏閣や料亭等特別な建築物を除いて、新しい家が好まれており、
賃貸や分譲マンション、一戸建等、新築の時から年数が経った家は価値が低下し、
20年程経つと家の価値は0で、土地の価値のみになるのが現状です。
一方、イギリスの家は、60年以上経った家が好まれ、その家の住み手が、
いかに手をかけ個性的に家が成長したかが、評価対象になり、
かつ街並に馴染んでいる家が高価な価格で売買されているのです。
なぜ、そのような価値観の違いがでてくるのであろうか。
一般的に木の家と、石の家の違いだと理解されている節があるが、
イギリスの住宅は全て石で出来ている訳ではなく、床や屋根は木材が使われ、
壁のみがレンガや石で出来ているのであり、石のみで出来ているから、
耐久性が有、長持ちすると言うことではない。
メンテナンスに、いかに手間とアイディアをつぎ込むかの価値観で
建物の耐久性と長持ちが違ってくるのであり、古いものを大切にすることで、
環境に対する配慮もしているとの感覚も持っているのが、
イギリスの住宅の維持の方法なのです。
日本の場合、一度建てられて住人が使うと、その瞬間から中古住宅です。
有名人が住んでいた家でも、そのまま使おうとすることは稀で、
大掛かりなリフォームをして、自分と家族に住みやすく改造するのです。
歴史的価値のある建物でさえも、保存するのに費用がかかるので、
新しい建物に立て替えることになるのが多いのです。
ましてや、住宅では保存などは考えられることも無く、立替が行われ、
薄っぺらな、欧米の住宅を模倣したような家が、
洋風住宅として、あちこちに建つのです。
一部に材の太い田舎の農家等を改築し昔の建物を生かして、
住む人もいますが、立替新築より費用がかかる場合も多く、
一般的な工法ではなく、また経済的、法規的理由があるのも確かなことです。
木製の外壁などは法規的に問題になる場合があり、
茅葺屋根のように、メンテナンスの費用が高額になる材料が使われていたり、
個人で負担するのが無理な工法や材料が使われていることもあるからです。
費用と法規的な問題が、ある程度存在するのは確かですが、それ以上に
常日頃の家のメンテナンスをする習慣と、メンテナンスに拠って楽しみながら、
家に個性が生まれ、個性が価値になり家の価格を維持し、
さらには高価な価値を生み出すようになることを、考える必要があります。
☆日本人はブランド品の浪費もしています。
グッチ、エルメス、シャネル、プラダ、ルイヴィトン等ブランド品の半数が、
日本で売られており、他の半数が世界の市場で取引されているとの情報もあり、
どのメーカーも日本市場の販売に力をいれているのです。
日本人はブランド品のデザイン性や品質の良さなどよりも、
ブランド自身をありがたがり、持つことにステータスを感じているのです。
したがって、ブランド品を持つことで個性が滲み出し、
雰囲気が出てくることに気を使うのでは無く、所有したブランド品を見せることで
「わーすごいプラダの最新のバックだ」との評価を得られ、
満足しているのです。
このような形の評価を得ることに、喜びを感じていることは、
家も新しいブランドもの(大手ハウスメーカー)をありがたがってしまいます。
さらに、メンテナンスはほとんどせず、家を劣化させて、価値を無くすのです。
もともと、薄っぺらな欧米の住宅を表面だけコピーしたような住宅ですので、
メンテナンスをしても、それほど持たないのかも知れません。
自分で価値観をはっきり持ち、個性的な家をメンテナンスし、
雰囲気のある家を持つようになると、家の価値が下がらなくなり、
適正な価格での家の売買が可能となるのです。
立替などの余計な費用や、立替による多量なゴミなども不要になり、
古いものも新しいものも、個性に合わせて手に入れられる時代になってきます。
日本の現状では、古いものは極端に価値を失います。
アンティーク的な価値が評価してもらえれば、一応大切にしますが、
個人的には価値判断が出来ないため、古いことで汚い野暮ったいとのイメージを
持つことになり、大切にされないのです。
☆イギリスは、夫婦の部屋が中心
イギリスの住いの中心は、夫婦のベットルームにあり、「住まい」の間取りも、
主寝室を最初に考え、そのあと他の部屋を考えてゆきます。
家では夫婦の繋がりが最も大切なことであり、子供と云えども、
立ち入ることが出来ない関係であり、その寝室も同様に夫婦だけのもので、
子供も迂闊に立ち入ることが出来ない領域なのです。
日本のように子供が出来ると、子供中心の家族になり、
妻としてよりも母としての存在が優先され、夫婦の関係が希薄になるのが一般的で、
夫婦の領域、子供の領域、家族の領域との空間の分け方が、
あいまいになり、親子関係が中心になってしまうのです。
開放的なオープンな間取りは良いのですが、夫婦に限っては占有領域を
確保することが、夫婦の絆にとっては、大切なことなのです。
☆子供の自主性と個性を育てる住宅
子供の育て方にしても、イギリスの場合は、親が塾や学校で思い悩むことは
ありません。
子供の個性と人格を最初から認め、勉強するもしないも子供本人の責任であり、
勉強せずに大学に行けなくても親が強制することはしません。
子供が勉強する場合、リビングルームやダイニングのテーブルや、子供室の
ベットの上など、気に入った場所で勉強するため、個室にこもることも無く、
兄弟や親に勉強をみてもらうことも気軽に出来る関係になるのです。
この形態は日本の常識から見ると、子供が自立し難い環境に思えるのですが、
子供が自分の意思で、勉強をやる場所や方法を決めることになり、
日本の子供より、自分で責任を持たなければ、勉強をするのも難しく、
反面勉強する気になれば、何処ででも可能との考えを植えつける環境なのです。
独立した部屋がある日本の子供と、どちらが自主性が育つ環境か考えてみれば、
部屋を与え塾や家庭教師で無理やり勉強をさせている日本の教育では、
大学に行き自由に勉学が出来る環境になったときに、
やりたい勉強が見つからないと言い、2度も3度も大学教育を受けなおす始末です。
自主性は物理的環境では無いことを示しています。
イギリスで1960年代に吹き荒れたバンダリズムがありました。
バンダリズムとは、当時の若者による住宅や施設の破壊であり、
スプレーによる落書きやベンチをハンマーで叩き割ったり、
エレベーターを壊したりと、街が荒れていった時期なのです。
そのバンダリズム活動をした若者の多くは、
イギリス政府が市民の住環境のために造った多くの高層住宅で成長した、
若者が起こした場合が多かったのです。
高層住宅はイギリスの市民の住居を増やしただけで、ゆとりも無く、
戸建や低層の住宅に住む人たちに比べ、暴力的になり、すさんだ心を育てる、
温床になりうるとの統計が出たため、イギリス政府は国をあげて造り続けた、
高層住宅を、建て始めて10年程度にしかならないのに関わらず、
全てを取り壊し、低層の住宅に切り替えたのです。
これは、極端な例と言えますが、イギリスの住宅でも若者を犯罪に走らせる、
住宅が存在したのですが、それが余裕の無い高層住宅だと、判明した場合には、
素早い対応をすることが必要であることを示しているのです。
我が国でも余裕の無い高層住宅は造られましたが、
犯罪の温床になったとの統計も、研究もなされておらず、当然取り壊しはなく、
現在に至っています。
しかし、我が国の子供の犯罪や子供の虐待などの増加を見ると、
住宅自身の影響も考える必要があるのです。
☆イギリスには2世帯住宅はほとんどない。
イギリスでは子供の勉強のときにも、記述しましたが、自主独立性を子供の時から、
植えつけて育てるため、18歳以上は自分でやっていくのが基本となり、
結婚をすれば、当然親と住む子供はほとんどいないのです。
親に頼らず、夫婦二人のみで別の場所に住み、親からの援助は一切無く、
親も子供へ援助をしない代わりに、老後の面倒を見てもらうこともしません。
日本の2世帯住宅は、福祉が充実していないため、子供が親の面倒をみることで、
福祉の充実の代わりとし、さらに国民の福祉コストを安するシステムとして
機能している面があり、悪いことではないが、そのため親離れ子離れが出来ず、
お互いの家庭にも口出しするようになるので、自主性の点では、
大きくイギリスに遅れていることは明らかです。
☆イギリスを好きな人が日本人にも多い。
イギリスの街並みは、昔の街並みを維持するように造られ、
多数の人が街並みを守ろうとし、住宅とインテリアは、持ち主の個性と、
古き時代のビクトリア様式の落ち着いたデザインが好まれ、
家具類はジョージアン朝のものが好まれているため、
新しい薄っぺらな住宅や家具は嫌われるのです。
古い時代のものは、家具にしろ洗面台等の住宅の設備にしても、
造がしっかりしており、彫刻なども上質のものが多く、現代の家具と類比較すると、
職人の手のかけ方も、重厚さも全く違っているのです。
ハリーポッターの映画が大ヒットするのも、
映像が古き良き時代を思い返す道具となり、古い住宅と家具が雰囲気を盛り上げ、
昔のイギリスの風景の良さを醸し出している面も見逃せません。
また、環境対策としても、古いものを大事にするためには、
修理で直すもこと多く、日本のように何でも買い換えた方が安いとの
判断にならないため、不用品としてのゴミの排出が少なく、
企業も修理可能な製品を多く出すため、国全体として環境にも貢献しているのが、
イギリスの生活システムです。
日本でも30年前には家具や住宅も補修により長く使っていたのです。
現代の日本の姿は仕事と通勤だけで、時間に追われストレスが増大し、
ストレス解消に安いものを買いあさりゴミを増やしているのです。
その自分たちの姿を見て、不安を感じ、いまだに古い時代の良さを、
大切に自分たちの生活に取り入れている、イギリスにあこがれるのです。
急速な発展は便利な生活が出来て良いのですが、
同時に不要なものも沢山生み出し、それらの生産のために、
時間に追われることになります。
本当に必要なものだけを大切にするような暮らしになれば、
余裕も出来、古いものも新しいものも必要なものだけを、
大切に維持する心が育つことになり、
環境にも配慮して生活出来るようになるのです。
今回は以上です。
「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」のページです。
apssのhp参考にしてください。
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/kennkou1.html
ありがとうございました。
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