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「図1:玉石の上に柱の直立て工法」
「図2:床下換気口や布基礎」
「図3:基礎パッキン」
「図4:基礎・床下のスタンダード(スパイラルエアーシステム住宅の基礎)」
◆ 健康と住まい−35 ◆◆◆
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◆◆◆◆ present by apss
朽木 醒(くちき あきら)と申します。
健康と住まいの35回目になりました。
35・「住まい」の床下を科学する
☆ 前回は、住宅の完成後不安を抱えているメールについて述べましたが、
ハウスメーカーや工務店に設計施工でお願いしている多くの方の為に、
施工時の「自主・撮影検査マニアル」の提供を致します。
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☆ 換気の話が、専門的になり判り、難くなっていると思いますので、
もう一度、基本に戻って、やさしく話してゆきます。
☆01 換気はなぜ必要なのか?
人は空気が必要です。木も同様に必要です。コンクリートですら必要なのです。
人は生きてゆく上で空気(酸素)が必要なのですが、木材やコンクリートの場合は
通気により、水分のコントロールをし、材の強度を増してゆくのです。
木材の中の水分が少なくなることで、材質の強度が上がるのです。
通気によって、木材の水分コントロールが適正になると、
木材は耐久性能も向上するのです。
木材は、材の中に隙間が多く、多量の水分を吸収します、通気がないと
水分が蒸発できず、含水量の多い状態を維持することになり、カビや腐朽菌、
はては、シロアリまで寄ってきて、強度を早く失わせることになるのです。
木材は、材質によっても異なりますが、大まかに柱1本で3、4リットル、
多い場合は6リットル以上も水分の吸収をする、とても吸水力のある材料です。
通気がある状態に置かれた、柱や梁は15%程度の含水率までになり、
その状態を続ければ、強度も増しますし、カビや腐朽菌にも侵されず、
シロアリにもあまり寄ってきませんので、強度が維持できるのです。
木材は種類により異なりますが、通気があれば、概ね木として育った期間と同じ期間は、
強度が増し、その後徐々に経年劣化を起こすので、
50年育てた木は最低50年は保つ、と言われているのです。
通気の条件が良ければ、もっと長く保つことになるのですが、一般の住宅では
躯体(構造体)に対する、通気と湿度の関係を考慮しておらず、カビや腐朽菌、
シロアリ等に侵される「住まい」も多く、とても短い耐久性能になっているのです。
☆02 このような、躯体の状況を、「住まい」の、床下から見てみましょう。
床下は、1950年の建築基準法により基礎及び換気口が義務付られました。
その時より、土台の劣化が始まったのです。
古くは、土台を使う住宅はなかったのですが、建築基準法制定以後、
基礎に建物を堅固に固定する為に、土台が使われるようになりました。
古くからの、玉石の上に柱の直立て工法の場合は、基礎(玉石)に接する材が
柱状に立っており、風も抜け、柱の含水率は低く、劣化は少なかったのです。
また、地面近くの柱が傷んでも、柱の下の部分だけ取り替えることが、
簡単に出来たので、メンテナンスも楽でした。
(下記をクリックすると「図1:玉石の上に柱の直立て工法」が見えます。)
図1:玉石の上に柱の直立て工法
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/meru/kenmeru35.html#tamaishi1
コンクリートの基礎の上に、土台を直接のせるようになると、
土台はコンクリートと接する面が、乾かず乾燥状態にはなかなかなりません。
さらに、床下の地面の防湿をしていない場合には、地面からの湿気が影響して、
土台の乾燥状態が、さらに悪くなっていきました。
このような状況の土台は、直ぐにカビ、腐朽菌、シロアリに侵され、
強度がなくなるので、防腐・防虫薬剤により強度を保つようにしたのですが、
塗布より数年経ち、薬剤効果が無くなると、再度、薬剤の塗布が必要になります。
完成後に行う薬剤の塗付は、完全な塗布は不可能ですので、材の劣化を早め、
20〜30年が寿命だと言われだしたのです。
(下記をクリックすると「図2:床下換気口や布基礎」が見えます。)
図2:床下換気口や布基礎
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/meru/kenmeru35.html#zairaikisos
☆03 それでは、土台の健康(耐久性)を保つ為にはどうすれば良いか?
まず、カビや腐朽菌等に関してですが、カビも生存条件として、酸素、温度、
水分、栄養物が必要です。
この条件のどれか一つでも外せばカビは生育できなくなります。
酸素はいつもありますし、温度は25度〜35度が適温ですが、
0度〜45度程度の範囲まで、生存可能領域で、温度を外すのも難しいのです。
栄養物は、木材自体が、キノコの栄養になることからも判るように、
栄養物であり、これも外すことができません。
したがって水分をどの様にコントロールするかにかかってくるのです。
空気中の相対湿度75%以上でないとカビは発芽しないと言われており、
また、相対湿度60%以上ならば、繁殖すると言われています。
したがって、床下を75%以下の湿度に保つことが出来れば、カビや腐朽菌は、
ほぼ育たないのです。
また、木材の乾燥材は、含水率15%程度になり、
この15%以下の含水量の木材は、カビが生えたり腐ったりはしないのです。
木材の乾燥状態15%以下になると、カビや腐朽菌に使える自由水が無くなり、
カビや腐朽菌に侵されないのです。
外気同様の通気が木材の周りにあれば、木材の含水率は15%程度になるので、
カビや腐朽菌などの心配はなくなります。
東京近辺では、6、7、8月に相対湿度75%を超えますので、
この時期の床下の換気法さえ、過まらずに通気が出来ていれば、
木がカビたり腐ったりすることはないのです。
一般に床下は、外部や室内の通気のある環境より悪い条件になっているからこそ、
薬剤が必要になり、薬剤の必要性が叫ばれていたのです。
床下が外部より環境が悪くなる原因は、床下の地面よりの湿気、基礎と土台の密着、
床下の温度の低下による相対湿度の上昇と、通気不足の4点になります。
この4点を防ぐには、基礎とは別に、床下に防湿シート及びコンクリートの打設、
基礎パッキンにより、土台を基礎から浮かす、床下に温度(熱)の供給、
そして風(通気)の供給、をすれば問題解決が出来ることになります。
(下記をクリックすると「図3:基礎パッキン」が見えます。)
図3:基礎パッキン
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/meru/kenmeru35.html#kisoue001
☆04 シロアリ対策についてはどうでしょうか?
シロアリは風と光を嫌い、木材の中に水分が豊富なところを好みます。
(一部乾燥材を好むシロアリもいます)
シロアリ被害は、風と光を嫌う為、土中から床下に入り込み、
厨房下や浴室下の土台で、含水量が多い木材を好んで食い荒らします。
基礎の外部から、外壁周りの土台に被害が出ることは少ないのです。
外部は光と風があり、さらに人の目に付きやすい為、よほど好物の食材が無い限り、
嫌いな外部を通って害を及ぼすことは、しないのが普通です。
近くに好物が無い場合や簡単に土台にたどり着ける場合には、
シロアリを防ぐ上でも、床下をコンクリートで固めるのは、とても有効な手段で、
さらに、外部の基礎周りの犬走りをコンクリートで打つことも重要です。
基礎を高くすることも効果があり、地面より30cm以上にすると、
効果が高くなることが、資料に記されています。
これらの内容を考え合わせて基礎と土台に関してのスタンダードを作れば、
基礎を地盤面より30cm以上の高さにし、布基礎+防湿コンクリート打設か
ベタ基礎(こちらの方が、強度、防蟻、防湿に効果的)にし、
基礎パッキンを使用して土台を基礎から離し、木の乾燥状態を良くする。
以上の仕様にすると、カビや腐朽菌、シロアリ対策をした、基礎となります。
(下記をクリックすると「図4:基礎・床下のスタンダード(スパイラルエアーシステム住宅の基礎)」が見えます。)
図4:基礎・床下のスタンダード(スパイラルエアーシステム住宅の基礎)
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/meru/kenmeru35.html#spairaldw
さらに、熱(温度)と、風の供給をすれば、実用的に問題のない床下となるのです。
熱(温度)と、風の供給を同時に行う為には、室内の空気を風として、
床下に送り込むことで対応できます。
したがって、換気システムとして、居室内の空気を床下に送り込めば、カビ、ダニ、
腐朽菌、シロアリ等の対策にもなり、補助空調の役割も果たす床下になるのです。
床下に風を送り込む場合には、土台や構造体の薬剤処理は、必要なくなります。
なぜならば、和室の柱や鴨居、長押、寺院の木彫など、
室内にある木材はほとんど傷みません。
流れる空気に触れている木材は、ほとんど傷まないのです。
先日も東大寺の運慶作の木彫、阿形像、吽形像の補修工事の状況をTVで
放映していましたが、鎌倉時代の木材が現在でも十分使える状態にあるのです。
阿形像、吽形像は東大寺南大門の守り神として半屋外の場所に、
800年以上も設置されていた木彫ですが、その彫像の木材がまだ十分使用可能な、
状態にあるのは驚きであり、木材の高耐久性を示す良い例です。
木材の良好な状態を保つには、通気にさらされており、
十分な乾燥状態にあれば、長持ちするのです。
20〜30年で傷むことはないのですが、現在の住宅の床下や、小屋裏、
壁の中などの見えない部分の換気状況がいかに悪いかを、示しているのが、
耐用年数30年程度と言われている原因なのです。
☆05 床下換気口ではなぜだめなのか。
床下換気口は10年程前までは、床下換気の主流で、それまでの建物は気密度が
あまり高くなかったと言えます。
当時の住宅は、床下からの風が建物の内外を問わず、隙間風やドラフト現象により、
床下から建物上部に吹き上げる風圧が働き、床下の通気の量を確保していたのです。
先日も知人宅の茶室に入り、茶釜の炉を取ってみると床下から冷たい風が、
相当量吹き上げてくるのが、手に感じられました。
和室の畳の下や、板の間、巾木の隙間等から、床下の空気が隙間風として多量に、
吹き上げていたのが、ほんの10年程度前までの「住まい」だったのです。
現在の住宅は、建材や技術の進歩により、隙間風は劇的に減りました。
在来工法で、普通に造っても隙間相当面積10cu/u以上になることはないでしょう。
高気密住宅の目安は北海道以外では、5cu/uですので、
十分に気密性能がある「住まい」と言うことができます。
さらに壁の中にはグラスウールが隙間無く充填されますので、
床下から上昇気流を起こす要素がほとんど無くなってしまったのです。
吹き上げる風の力がなくなれば、小さな換気口では換気量不足になるのは当然です。
今や、床下換気口だけの床下の換気状況は、全くの換気量不足の状態であり、
夏は外部からの湿気を冬は室内からの湿気を溜めこみ、床下の低温も影響して、
いつ結露を起こしても、すこしもおかしくない状況になっているのです。
床下換気口を増やしたり、炭を設置したりして、湿度の分散をはかり、
何とか維持できる環境にするため、防腐・防蟻剤の塗布が必要なのですが、
薬剤の塗布は、数年しか効力が保てないのです。
薬剤は使わないにこしたことはなく、さらに床下を利用することを考えた場合、
室内扱いにして、十分な通気を確保しておけば、問題なく、
床下を合理的に使用することが可能になります。
したがって、カビ、腐朽菌、シロアリ等の問題を解決し、
床下に使われている木材の耐久性を確保するのであれば、床下を室内扱いにし、
居室内の換気空気を床下換気に使うことは、きわめて合理的であり、
理にかなった風と熱の使い方なのです。
居室内の空気を床下に送り込むことによって、風はそのまま通気としての
役を果たし、熱は一旦ベタ基礎に蓄えられて徐々に放出されるため、蓄熱槽として、
さらに熱交換器としての役目もベタ基礎が果たしてくれる事になり、
薬剤が不要になり、木材の耐久性も大幅に増し、
床下を有効に利用することも、可能なシステムになります。
このように、スパイラルエアーシステム「住宅」の床下はこれからの
「住まい」にとっての多くの問題を解決し、合理的に創られたシステムなのです。
今回は、スパイラルエアーシステム「住宅」の床下の考え方です。
続きは次回になります。
「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」のページです。
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ありがとうございました。
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