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◆         健康と住まい−33  ◆◆◆
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◆◆◆◆                 present by apssk


朽木 醒(くちき あきら)と申します。

健康と住まいの33回目になりました。



33・気密住宅の気密性は高いほどよいのか?

 今回は、世に言われている気密住宅とシックハウスのための建築基準法で決められた、 
換気量との関係について記述します。

 外断熱高気密住宅が目立ってきました。気密住宅は本当に省エネ住宅と言えるのでしょうか?
 一般的には、高気密高断熱になれば、省エネ・エコロジー住宅のように思われています。
 しかし、シックハウス対応の建築基準法が改正され、24時間換気が義務付けられて、
住宅でも、0.5回/hの換気量が必要になりました。
 この必要量はどのくらいか、具体的な量を示して検討してみますと、100u(33坪程度)
の住宅で、天井高さが2.4mだとすると、住宅全体で240m3の容積があり、
その1/2の120m3を1時間で換気する必要があることになります。

 一方、気密住宅は1cu/u程度が省エネであり、室内環境を維持し易いと言うことが、
高気密、高断熱ハウスメーカーあたりで、示されています。
 1cu/uとは、換気量として考えるとどの程度になるのでしょうか、実際にはこの数字は、
隙間相当面積ですので、気圧差か気流の速さを想定しないと、換気量は出てきません。
 そこで、判りやすいように気流の速さを想定して、考えてみたいと思います。
 人が風をあまり感じない気流速度を想定すると0.3〜0.5m/秒程度ですので、
換気量が大きい方を考えて、0.5m/sとすると、1時間当り、隙間による換気量は18m3程度と、
計算することが出来ます。

 基準法が決めた120m3/hの換気必要量に比べて、18m3/hはとても少ない量です。
 それでは、100uの住宅にとって、120m3/hが多いのかと考えますと、
大人の一般的な必要換気量は、20〜30m3/hとの資料が建築計画学でも示されています。
また、事務所などは必要換気量が示されており、推奨値では25m3/h・人となっているのです。

 住宅においても、大人は0.02m3程度のco2や40g程度の水蒸気を1時間で発生させており、
さらに、室内で使う化粧品や芳香剤、殺虫剤、掃除用の界面活性剤や塩素系除菌剤など、
数え上げれば、限がないほど沢山の化学物質が使われます。
これらの物質を、洗い流すためにも、ある程度の換気量は必要となります。
 したがって、住宅でも4人家族では、100m3〜120m3程度の換気が1時間当たりに
必要と言う事になります。

 この量は、シックハウス対策に必要な換気量ともほとんど一致する換気量なのです。
 以前にも記述したことがありますが、米国で1973年以後のオイルショックの時期に、
省エネを目的にオフィスビルで換気量を1/3程度まで減少させたことがあります。
 この、換気量の減少が原因となり、米国での最初のシックビル事件が起こったのです。
 当時米国では、化学物質を使った仕上材が多かったが、オフィスでの空調に通常の換気量
(30m3/人)を流していたため、問題になっていなかったのです。
 しかし、省エネのために換気量を1/3程度に減少させたことで、シックビル症候群の人が増え、
原因を究明した結果、換気量の減少が問題だと判り、元の換気量に戻した経緯が資料にあります。

 現在の米国での調査でも、シックビル症候群の人が12%程度の高率で存在しているとの報告を、
石川教授(北里病院)より、最近伺いました。
 米国のオフィスビルの換気量は、30m3/人程度は確保しているのですが、
アンケートによる調査によると、この程度の高率のシックビル症候群患者が存在するのです。
 高気密、高断熱住宅は省エネと居心地を考えての、高気密ですが、先ほどの計算で明らかなように、
1cu/uの気密性能のある住宅では、自然換気での換気量は多くても18m3/h程度の
換気量しか期待出来ません。

 100uの住宅で、シックハウス対策の換気必要量も、建築計画学での必要量も、
100m3〜120m3/h程度になりますので、1cu/u以上の高気密住宅では、
自然換気での換気量は、実際の必要量の1/5〜1/6位しかなく、全く不足しています。
 さらに、以上にするためには必ず、プラスチックシートで気密層を形成し、
気密をする必要がありますが、プラスチックシートを構造材の木部に張ると、その部分の通気性がなくなり、
構造材にとってはあまりお勧めできる方法とは言えません。
 換気に関しては、機械換気で不足量を補うことが必要なのです。
 この点から考えると、高気密住宅は計画換気が必ず必要になります。

 また、3cu/u程度の気密性能でも高気密と言われており、隙間風が感じられる住宅にはなりませんし、
 3cu/u程度の気密性能住宅では、隙間面積で風速0.5m/sとして、自然換気量は50m3/hとなります。
 この程度でもシックハウス対策に必要な換気量の半分弱の量なのです。

 隙間面積は、窓周りの隙間も含めての隙間ですが、3cu/uだとすると100uの住宅で、
300cuの隙間があることになります。
 この大きさは、横30Cm縦10Cmの広さになりますので、一ヶ所でまとめるとすれば、
かなり広い面積ですが、100平米の面積に分散されているので、あまり問題にはなりません。

 さらに、直接外気からの給気口としての換気口(φ100mm程度)の有効換気面積を70cu/個として、
換気口は各部屋1個とすれば、5個程度が標準ですので、計350cuになります。
 先ほどの隙間面積と合計すれば、650cuの隙間があることになります。
 この隙間面積で、120m3/hの換気量を動かすと、0.51m/sの風速になり、
まあどうにか、風の動きを感じないですむ程度の風速になるのです。
 これ以上隙間面積を少なくすると、風速が早くなることになり、
冬には逆に風による寒さを感じることになりかねません。

 また、隙間面積だけで換気量をカバーしようとすると、6.5Cu/uとすれば、同様の結果が得られ、
問題なさそうに思われますが、窓近辺や床と巾木の隙間などから風が感じられ、隙間風となります。
 換気量の半分以上を給気口で賄うことで、給気口の位置を調整し高めの位置から、
給気が拡散するような形で取り入れると、冷気はそんなに感じなくなります。

 いたずらに高気密にする必要はないのですが、ある程度の気密性と給気口を組み合わせた、
給気システムにすることが、これからの換気システムとしては必要なことです。
 室内の空気量の半分ほどを1時間で取り替えることは、人の健康上からも生活する上からも、
必要になりますので、ある程度のエネルギーロスは、必要なことなのです。
 省エネと住み心地ばかりを優先し、ぬくぬく生活するような状態は、細菌やカビ、
虫の類までも増やすことになりかねません。
 これからは、換気にもっと関心を持ち風通しや気配に注意をはらってください。




 今回は以上です。



 「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」のページです。 apssのhp参考にしてください。 http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/kennkou1.html



ありがとうございました。


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