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C図 D図


◆         健康と住まい−31  ◆◆◆
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朽木 醒(くちき あきら)と申します。

健康と住まいの31回目になりました。



31・少年犯罪の中で「住まい」の役割は?-2

 前回、神戸の酒鬼薔薇事件の少年の家を題材に取り上げた直後に、
その題材にしたA少年が保護観察処分になるとのニュースがあり、
現在までの経過が報道されました。
 その中に父親の手記があり、このメールマガジンとして気になる話がありました。
 犯行以前の家族状況を書いたものでしたが、
ほとんど犯罪を犯したA少年と関わりを持たずに、犯行を報道で知ったとのくだりです。
「中学生の息子とは、仕事が忙しかったので触れ合いの時間が無かった。」
とのコメントですが、多くの家庭によくある風景です。
 このような状況が、わが国の家族の現状であり、普通の家族の状況なのです。
 だからこそ、家族の顔を見なければすごせないような、
オープンで引きこもりの出来ない、すこし個人的には負担になる間取りで、
ちょうどバランスがとれると言えるのです。

さて、今回も同様な環境を作り出した、家族の空間に迫りたいと思います。


2.金属バット両親殺人事件の少年の家:

 この事件もとても世間を騒がせた事件です。

 概要は、二浪中の次男(B少年)が勝手に父親の金を使ったことから、酷く怒られ、
その夜に、金属バットを持ち出し、睡眠中の父親と母親とを殴り殺した事件です。

 夫婦の仲も冷えていたこともあり、また長男は有名私立大学に進学していたので、
B少年(二十歳になった青年ですが、あえて大人に成りきれていないと言うことで、
少年といたします)は劣等感に苛まれていたと思います。
 その中で、このB少年はほとんど家族の支援を得られていない状況でした。

 家族であっても、顔を会わせコミュニケーションを持っていないと、
疎外感が出てきます。
 父は東大卒、母は良家の子女、兄は有名私立大進学との家族の中にあって、
出来の悪いことは、本人が十分承知しているのです。

 出来が悪いことは、本人の責任の部分もありますが、そうでない部分も沢山あります。
人の個性は、もって生まれた部分が7割程度あり、あとの3割程度が本人の努力や、
環境によって、変化する部分ではないかと、思っています。

 私も、2人の娘を持つ父親ですが、その子育ての経験から言うと、
人の個性は、本当に遺伝子による部分が大きく、独自の個性をもって生まれた部分が、
7割程度あり、あとの3割程度が本人の努力や、
環境に影響されるものではないかと思わせることを、何度も経験しています。

 もちろん親の良い部分も、悪い部分も含まれるのが個性ですが、
それ以上に親にも無いような、個性を持って生まれてきています。
 この個性は、そう簡単に変わることが無く、占いや運命論が流行ることになるのですが、
変更可能な3割を使って、全く性格を変える人もいます。

 性格的に変更可能な3割を使って、徹底的に自分の意思で変更することを学ぶと、
意思の力が実感できるようになり、自分の意思に反する運命を拒否しようと思い、
またその力が意思の中に生まれてくるからなのです。

 普通に生活していると、自分で決定した行為も、
他人に決定されて動かなければいけない行為も、それほど、
内容を省みずに行動してしまいます。

 しかし、徹底的に自分の意思に従うことを決め、その達成を心がけると、
次第に、自分が行動を起こすための指示が、自分の決断なのか、、
人の指示によるものなのかの判断がつくようになり、自分の決断による行動の場合は、
辛さや、大変さが付きまといますが、一種の気持ち良さがあとに残ります。
 一方、他人に指示されて行動する場合には、楽に行動できますが、
空しさが残ってしまいます。

 したがって、自分の決定に従い行動することを、徹底的に学んだ人は、
個性が強くなり、もって生まれた7割の個性を創り変え、自分の意思で、
9割の個性を創ることが、出来るようになるのです。

 それでは、7割の先天性の個性と、3割の後天性の意思は「住まい」の中で、
どのような変化をするのでしょうか。

 家族とのコミュニケーションがし難い、子供部屋のある「住まい」での生活は、
家族との係わり合いが嫌ならば、自室に逃げ込めば、ほとんど自分の世界に浸れます。
 小学生程度までは、なにを言われようが、両親に従う感情がありますし、
親の助けが必要な年齢ですので、自室に閉じこもることはありません。

 一般に、中学生以上になると、親や周囲がうるさくなり、
一人で居る方が楽になる気がします。

 金属バット事件のB少年の場合、両親の高学歴もあり、
両親は学歴を気にしていたのだと思いますが、受験勉強を強いてでも、
有名校に通わせたいとの、親の願望があったのです。

 親の有名校偏重の思惑があり、親の思惑に反して、二浪もすると、
親に対して負い目を負うことになります。
 このような時期に、ほとんど顔を親と合わせないで済む、
C図のような、B少年の「住まい」では、子供が自室に引きこもり、
ほとんど居間に出てこなくなります。
(下記をクリックするとC図:B少年の「住まい」1・2階間取りが見えます。)





  • C図:B少年の「住まい」(当時)


     C図の「住まい」の場合、玄関を入った右側に離れがあり、
    ここが父親の寝室になっていました。
     玄関につながる廊下に階段、WC、洗面室、浴室が付いており、
    食堂と居間が各8畳分ありながら、2部屋に独立しており、
    キッチンも4.5畳の独立した室になっています。

    夫婦仲も大分冷めていたようで、母親も居間の奥の9畳で一人で、
    寝起きしていたとのことです。

     子供室は2階の6畳2間があてられており、兄弟それぞれ各部屋に分かれていたが、
    2階の各室は和室であり、間仕切が襖になっているので、そう独立性は高くありません。

     このように見てみると、前回の酒鬼薔薇事件のA少年の「住まい」と、
    似ている点が多々あることが判ってきました。

     細切れの部屋の集まり、玄関から子供室に直行出来る間取り、
    家族と関わりをもつ空間が貧弱である等々の点です。

     前回のA少年の「住まい」のA図をもう一度見ていただくと、

    http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/meru/kenmeru30.html#azu

    今回のB少年の「住まい」とも共通してコミュニケーションの無さが、
    間取りにも現れていることが判ります。

     このような、家族の触れ合いが出来ない「住まい」に家族が住むと、
    それぞれが食事の後も直ぐ自分の部屋に入ってしまい、家族の団欒が無くなり、
    夫婦間も冷えていってしまうことが多くなります。

     現代の家族は一緒に食事をするのは、夕食位しかなくなっています。
     その貴重な夕食後の団欒を20分でも30分でも家族全員で過ごすことによって、
    煩わしくもあるが、楽しさも味わえるのです。
     B少年が、食後の団欒を味わえなかったのは、
    C図の住宅の間取りも大いに関係していると思われます。

     話を元に戻しますが、7割の持って生まれた個性は、
    自己中心的に過ごせる個室にこもっていると、楽なことを考えるようになり、
    個性の中でも甘えの性格が増長するものなのです。

     個性にも色々あり、良いものは磨かれることで成長し、
    悪いものは切磋琢磨されることで、改善されてゆくのであり、子供のときは、
    主に家族との触れ合いで成長や改善が促され、
    大いに人間の成長に必要な時間となるのです。

     その家族の触れ合いを持つための空間が、貧弱であり、
    居ることが楽しくならないようでは、家族と言えども集まらなくなってしまいます。
     B少年の「住まい」の改良案である、D図を見てもらいましょう。
    (下記をクリックするとD図:B少年の「住まい」改造計画案が見えます。)





  • D図:B少年の「住まい」改造計画案


     D図はB少年の家族の家を、ほんのちょっと直しただけです。
     玄関を独立させて、食堂と居間そしてキッチンをつなげ、
    食堂の一部に小さな吹抜を付けただけです。
     各部屋の面積もほとんど変わらず、半間の物入れが出来、離れは客間としても、
    主人の書斎としても、有効につかえます。

     近頃の客は、居間や食堂に通し、一緒に楽しむ客がほとんどであり、
    形式ばった客が来るのは、ごく稀です。
     もし、フォーマルな客が多く来る家であるならば、物入れをやめ、
    そこに開戸を一枚つければ、WCにも行きやすくなります。

     間取りは、その家の状況により千変万化させられますので、
    状況にあわせれば良いのですが、基本の考え方が、問題となります。
     オープンで家族個人のプライバシーは少し制限されますが、
    お互いのコミュニケーションが取りやすい「住まい」にするのか、
    個人のプライバシーを大事にし、お互いのマナーと個性を尊重した、
    個室タイプにするかと言うことです。

    前回も今回の住宅もそうですが、ちょっとした気づかいをすれば、
    少なくとも子供が小さい時は、B図やD図の間取りにし、
    オープンな家族としてのマナーを身につけ、いつも気楽に、
    家族が触れ合えるようにしておくことが出来たのです。

     しかし、親に学歴があり、子供が親の思うように育って欲しいと思い始めると、
    空間構成が個室タイプの閉鎖的な間取りになってしまうのです。
     一寸した気使いと、多少の抑圧は家族の生活にとっても、大いに大切なことであり、
    欠かせないことなのです。
     そのためには、なるべくオープンな「住まい」で、
    家族が自然に集まることが出来る空間が必要となるのです。


    今回はここまでです。

    次回も、家族関係と空間についてです。



     「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」のページです。 apssのhp参考にしてください。 http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/kennkou1.html

    ありがとうございました。


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