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◆         健康と住まい−26  ◆◆◆
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◆◆◆◆                 present by apssk


朽木 醒(くちき あきら)と申します。

健康と住まいの26回目になりました。



26・「住まい」の換気は人にも建物にも健康をもたらす。


 今回は気になるメールが二通来ましたので、そのメール内容を見ながら、
話を進めたいと思います。
 一通目は、友人の床下の調湿炭を扱っている方からです。

メールの概要を載せます。(以下が概要メールです。)

「7月より新築一戸建てに入居しましたが、
湿気がとても多く1階の和室から小さな虫が大発生し、
畳をはぐってみたところ畳や床板が、カビですごくなっていました。
現在畳は撤去してもらい板を乾かしている状態です。
施工業者に床下にもぐって貰ったところ、
玄関と和室の境辺りの基礎が湿っている状態で、
どこからきている水分か分からないとのことです。
べた基礎で外断熱の工法で、換気口などはありません。
温度湿度計によると温度は21〜22度で一定で湿度は100%でほぼ一定です。
このような場合も床下調湿炭は効果があると思われますでしょうか?」

このようなメールだったのです。

 彼の友人は調湿炭の施工だけでは、だめだと思い換気をすることを勧めたそうです。
と同時に、良い知恵がないかと、私のところにもメールを送ってきたのです。
このケースは、外断熱と換気の関係を知らない施工業者が、外断熱工法にすれば、
全てよくなると思い込んで、施工をした典型的な例と言えます。

 外断熱工法は、快適に過す為の住宅を造る工法としては、とても良い工法ですが、
換気の理論と組み合わせて使わないと、恐ろしいことになるのです。
最近は、床下換気口を付けずに、基礎と土台の間に20mm程度の基礎パッキン
を置き、その隙間を床下換気口代わりにする工法が、多くなっています。
構造的には、基礎に大きな開口が出来ない為、基礎の強度が保てますし、
施工的にも、型枠の開口部が不要になり、開口補強の鉄筋等も要らなくなりますので、
一石二鳥の工法なのです。

 この隙間換気工法は、床下換気口を取付ける工法より計算上の開口面積は確保できますが、
外壁に張る合板やサイディングに塞がれたり、サイディングの水切り部分に、
重なり、隙間が狭くなり役に立たなくなることがあります。
外断熱材は気密にしなければ効果が半減すると
外断熱材メーカーの施工の説明書に書いてありますので、
外断熱工法にばかり気をとられて施工をすると、
このような、床下換気が無い基礎と床下を造ってしまうのです。

 この床下の状態は、丁度細菌の培養室のような環境になっており、
虫やカビ、細菌などが繁殖するのにとても良い状況となってしまいます。
上記メールにもありましたように、湿度100%で、温度21/22度
(温度は地域や季節によって変わります)上越地方だそうですが、今夏は温度が低めでしたので、
この程度ですが、本来ならばもっと温度は高くなり、
カビや虫の繁殖はもっと多かったことでしょう。

 虫(多分ダニだと思います)やカビ、細菌等生物のほとんどは水分が必要です。
逆に考えますと、水分が無くなれば、繁殖や生存が出来なくなるのです。
では、どの程度の湿度ならば良いのかと言うと、相対湿度60%前後になると、
繁殖や生存がし難くなってくると資料にあります。

 上記の床下はほぼ100%の状態になっていたとのことで、温度はともかく
この湿度では、カビもダニも、大繁殖する環境になっていたのです。
 水分の発生場所が分らないと言っているようですが、基礎を造ったばかりの、
コンクリートからは多量の水蒸気が放散します。
基礎の下には多分防湿の為のポリエチレンシートが敷いてあるはずです。
さらに、基礎の立ち上がりには、外断熱材が張られているのです。
基礎のコンクリートから放散する水蒸気は、全て床下に出てきますが、
床下からは、どこにも行き場が無く、床下の湿度が100%になってしまったのです。
 床下が常時100%の湿度になっていれば、夜の温度低下でもすぐに基礎に結露が出来ます。
湿度100%の環境では、カビもダニも細菌までも大繁殖するのです。
床下の湿度を下げてやらなければ、どうにもなりません。

 この状態では、本当に培養室の環境であり、カビ・ダニの繁殖にもってこいです。
上越地方でも、夏場の相対湿度は75%前後ですから、外気を床下換気に使う場合、
床下の温度が低い分だけ相対湿度は高くなりますが、
それでも、80〜90%前後の湿度になり、カビやダニにとっての、
繁殖条件内ですが、異常繁殖ほどの大事にはならないはずです。
 床下の空気が全く動かない状況であれば、本当にカビやダニの天国が出現するのです。

 床下換気がいかに大事か、理解して頂けたと思います。
ただ、自然換気での床下換気は先に申し上げました通り、80〜90%前後の湿度になり、
カビやダニにとっては、まだ居心地の良い状況ですので、やはり機械換気が望ましいのです。

 現状では、40坪程度の住宅の床下換気は、基礎の構造的強度のために、
開口部が少なく、全体で、有効開口面積が0.6u程度しかありません。
1面(東西南北どれかの面)で、100cmx15cm程度の開口ですので、
風の強いとき以外は通風があまり期待出来ない状態なのです。
 機械換気をし常時空気を動かせば、空気の停滞する部分が無くなり、
外気と同等程度の相対湿度となり、
カビ・ダニの繁殖をある程度抑えることが可能となるのです。

 床下の換気に室内空気を使った場合は、どうなるでしょうか?
室内空気でも水廻の空気は湿度を高くするので除外しなければいけませんが、
一般の居室の空気を使うならば湿度は外気とあまり変わりません。
夏場のように、空調を使い除湿をした場合には、
除湿による湿度が低い空気が床下に送り込まれますので、
当然床下の湿度も下がり、カビやダニの繁殖に適さない状況に近付くのです。

 室内の空気を床下や木造躯体の換気用として使う場合には、
室内の空調機の除湿によって、床下の湿度のコントロールが可能となるのです。
 夏の場合は、空調による湿度の低い空気を送り込み、
カビやダニの繁殖を抑える効果がありますが、
 冬の場合は、東京では屋外が50〜60%の湿度ですので、
外気を使えば、カビ・ダニの繁殖は抑えられますが、室内空気には湿度が加算されます。
そのため、床下の環境が悪くなりそうですが、水廻の空気を使わなければ、
60%前後の湿度ですので、断熱材をしっかりと付けてあれば、
温度低下による湿度の上昇もあまり起こりません。
冬の場合も、室内の空気を床下や躯体の換気に使っても、問題が起きることは無いのです。

 但し、注意しなければいけないことは、室内の空気を床下や躯体の換気に使う場合は、
そのシステムのメリットデメリットを良く心得て使わないと、
思わぬ障害に出くわすと言うことです。
 いえ、屋外の空気を床下や躯体の換気に使う場合も、現在の住宅の工法は、
技術的に進んでしまった為、大まかな考え方では問題を起こす可能性を沢山持っています。
どのような、換気方法でも、結露によるダニ・カビ、腐朽菌等の問題は避けて通れません。
 本当の知識と経験を持った人にチェックしてもらう必要があります。

 ’03/julからは、住宅に0.5回/Hの換気装置が義務付けられました。
自然換気でも良いのですが、多くの換気口を必要とし、あまり現実的ではありません。
ほとんどの住宅で機械換気をすることになると思いますが、
この換気による風を上手に使うことによって、床下や木造躯体の環境を良くすることが
今後の「住まい」に求められる換気方法です。

 これからの「住まい」は、住んでいる人と、建物としての「住まい」との両方共に
健康でないと、住む人の健康に影響が出てきてしまうのです。
「住まい」自身も生きていると考えて、建物を造り、さらにその後のメンテナンスを心がけて、
「住まい」の換気方法を考える必要があります。



 今回は以上です。



 「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」のページです。 apssのhp参考にしてください。 http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/kennkou1.html



ありがとうございました。


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