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◆         健康と住まい−21     ◆◆◆
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◆◆◆◆                 present by apssk


朽木 醒(くちき あきら)と申します。
健康と住まいの21回目になりました。

21・「断熱と気密の科学的考察!−2断熱材と中気密の関係は?」

二回目は「断熱材と中気密の関係は?」を考察します。
 前回断熱材を検討し、木造住宅では外断熱と内断熱で、断熱材の熱貫流率を
比べた場合、それほど差がないことをデーターでチェックしました。
 実際には大きな差があります。
これは内断熱に使われているグラスウールの場合が主ですが、
グラスウールと柱や梁、間柱等の間には僅かな隙間が出来ます。
 この隙間と柱、梁自体の断熱性能の悪さが重なって、
断熱能力で大きな差になるのです。
 ちなみに、グラスウールを充填する場合に両側に0.5o程度の隙間が、
出来たとしますと、140u(40坪)程度の住宅で、
0.2u程度の隙間が出来ることを意味します。
 外壁全体で0.2uと言うことは、気密テストの14Cu/u程度に相当し、
 現在建設される一般的な住宅の気密性能の10Cu/uよりまだ悪いのです。
 この隙間から体に感じない程度の通気(0.2m/s)があるとしますと、
140〜150立米/hの通気が断熱材部分でもあることになります。
 先日の「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」は気密テストで、
2.6Cu/uでしたが、窓部分の通気量を計算しますと1.2Cu/uとなり、
壁や屋根の隙間面積が1.4Cu/uとなります。
 1.4Cu/uの隙間で、同様の風速の通気があるとすると、
20立米/h程度の通気量となります。 
 通気量で比べても7倍程度の空気の動きがあり、このグラスウールの隙間による、
断熱効果の低下はかなり大きいと言えます。
 ただし、この通気量が結露の蒸発にも役立っていることは確かで、
グラスウールでの断熱を確実にするのはとても難しいのです。
 内断熱でグラスウールを使い、高気密、高断熱住宅を造っているハウスメーカー等は、
このため高気密、高断熱工法に相当苦労しているのです。
 室内と壁の間にプラスチックシート(ビニールシート)を挟み空気の移動を防ぎ、
断熱材部分では、筋違を無くし合板にしたり、
グラスウールを詰め込んだサンドイッチパネル部材にしたりなど、
断熱部分も気密になるようにしているのです。
 外断熱住宅の場合、高気密にするのに邪魔な部分がとても少なく、
頭の切り替えは必要ですが、それなりの注意をもって施工にあたることで、
2〜3Cu/u程度の気密性能を確保出来るので、
断熱効果も必然的に良くなるのです。
 気密性が断熱性能にも影響するのは、断熱材の隙間が断熱性能に、
大きな影響を与えているからです。
 隙間の出来ない部材を選ぶのも、断熱材選びの一つの考え方です。
 さて、高気密、高断熱の高性能住宅と、中気密、高断熱の自然派住宅と
呼ばれている住宅が、並列して論じられており、住まい造りを混乱させています。
 この2つの気密性の違いは、実際にはどのように違うのか、検討して見ましょう。
 現在、高気密、高断熱の高性能住宅と言われている住宅の気密性は、
1〜3Cu/u程度の住宅を指していると思われます。
 公庫の基準では5Cu/uですが、北海道や青森、岩手、秋田では2Cu/uが、
基準となっており、2Cu/u以下が本当の意味での高気密住宅と考えられます。
 そう考えると、中気密、高断熱住宅の気密性能は2〜10Cu/u程度を、
指すことになるのです。
 それでは、10Cu/uとは、どのような隙間なのでしょうか?
140u(40坪)程度の住宅にしますと、
30cmx50cm位の穴が明いている計算になります。
 人が感じない程度の風速として、0.2m/sで外気が吹き込むとすると、
100立米/hの換気扇を動かしているのと同じ位の風量が、
入ってくることになります。
 140u程度の住宅の空気容積は330立米位です。
この住宅の必要換気量は1時間当たり1/2回転(室内全部の空気を2時間に1回
入替える換気量)程度が標準ですので、160立米/h位必要となります。
 中気密の10Cu/uの隙間だけで通気する場合には、
不足しがちと言うことになります。
 風が強い日や、室内の換気扇を廻して室内の気圧が下がれば、
もっと多くの通気が得られますが、普通の状態ですと通気が不足気味になります。
 高気密住宅の場合は、前述の「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」でも、
2.6Cu/uしか隙間がありませんので、必要部分に吸気口を設け、
常時通気用の換気扇を廻し室内を負圧にして、
1時間に160立米程度の通気があるように設計するのです。
 したがって、中気密と高気密の違いは、何処から吸気して、
何処に排気するかの違いだと言うことになります。
 中気密は室内全ての、床部分などの低い位置の隙間から吸気し、
天井など高い位置の隙間から自然に排気し、コントロールは出来ないことになります。
 高気密の場合は決められた吸気口より吸気をし、決められた換気扇より排気し、
空気の流れをコントロールすることが出来るのです。
 ただし、通気をコントロールするのは、とても難しいのです。
空気は目に見えないので把握が簡単ではないのです。
 室内の換気や吸気の位置、凹凸や温度差など、
色々な要素が空気の流れに影響しているからなのです。
 通気量は中気密でも高気密でもそれほど変わりません。 
 要は住宅のプランや換気扇等の位置を考えながら、計画的に通気をするか、
自然に任せた通気とするかの違いです。
 私としては、換気量が同じぐらいであれば、修正が利く計画換気とする方が、
これからの空調が必要な住宅にとっては、適した工法だと思っています。
 中気密が自然隙間通気とすると、もう一つ問題があります。
 自然隙間通気の場合は、室内側のPB(プラスターボード)の下に、
防湿シートを張らないことになります。
 この状態で、暖房や冷房をすると、断熱材のグラスウールが、結露を発生します。
 暖房や冷房をしなければ良いのですが、いくら自然派と自認していても、
暖房はするでしょう。
 従って防湿シート無しで、グラスウール断熱材をあまり多くせずに、
断熱をした住宅にする必要があります。
 断熱性能や気密性から考えてもあまり省エネ住宅にはなりません。
中気密、高断熱を謳っているグラスウール使用の住宅は、
壁内結露に対してどう対処しているのか疑問があります。
 もっとも、発泡プラスチック系の断熱材を使っている場合には、
それほど結露の心配は無いかも知れません。
 今造られている住宅は暖房や冷房無しでは、過ごせない状態になってきました。
中気密と言うのは実質的には無理な考え方だと思います。
 自然派で、夏冬共に風通し良く過ごしたい方は、
中気密などと中途半端な考えを持たずに、
少なめの断熱だけで気密無しと考えた方が、スッキリするはずです。
 断熱材として、何を使うかによりますが、高断熱の場合にグラスウールの使用は、
室内側に防湿シートが確実にいるので、中気密は考えられません。
 中気密と言うのは、完全空調住宅に対して考え出された、考え方だと思いますが、
夏冬は完全空調するような、住宅の場合は、問題があることも否定できませんが、
「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」は夏冬共に、
家族が適当と感じた室内空気を床下に送り込むので、
空調を常時する必要がありません。
 窓を開けたい場合は窓を開けてかまいませんし、
空調が欲しくなった場合のみ空調すれば良いのです。
 一般の高気密、高断熱住宅は、一度暑くなったり寒くなったりしますと、
建物自体が熱を持ってしまい、なかなかさめたり、
温かくならないようになってしまいます。
 したがって、夏冬には常時空調使用の状態を続けなければなりませんが、
「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」には、
床下の基礎コンクリートが蓄熱槽として使える長所があります。
 ベタ基礎のコンクリートは、断熱されていますので、外気の影響を受けず、
大地のエネルギーと、室内の空気のエネルギーを蓄熱し、徐々に放出しながら、
住宅の壁の中から室内空間を包み込み、人に優しい輻射熱として、
室内に再び熱を供給しますので、省エネにもなるのです。
 気密と断熱はこれからの住宅の特に重要なテーマです。
気密と断熱を切り離して考えると、耐久性や、
VOCなどで問題を起こす可能性が高くなります。
 全体をシステムとして考え、それぞれの住まいに合った気密と断熱を選んで下さい。
 気密と断熱はプランにも影響を与えます。
 余りにも入り組んだ建物は断熱も難しくなりますし、気密性能も出にくくなります。
 従って、デザイン的にもスッキリしたシンプルなデザインで、
自分に合った個性を表現することを考えなければなりません。

 「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」のページです。 apssのhpに載せて置きました。 http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/kennkou1.html

 今回は以上です。

ありがとうございました。


apss設計までをお願いします。

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