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◆         健康と住まい−20     ◆◆◆
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◆◆◆◆                 present by apssk


朽木 醒(くちき あきら)と申します。
健康と住まいの20回目になりました。

20・「断熱と気密の科学的考察!−1外断熱は本当に断熱効果が高いのか?」

 さて、今回から断熱と気密に対する科学的な考察を行ないます。
一回目は「外断熱は本当に断熱効果が高いのか?」を考察します。

 外断熱が良いと言われて久しいのですが、あまり増えてこないのは何故か、
その価値が解りづらいのではと、思われる部分があります。
 実際に外断熱の熱貫流率を内断熱と比べながら、話を進めて行きます。

断熱のモデルを考えるとわかりやすいと思います。

 木造外断熱計算モデル「外断熱Aタイプ」
外壁材:セメント系サイディングt12o・熱伝導率1.5w/m・K
外断熱材:ウレタン系t40o・熱伝導率0.021w/m・K
内部壁:PB(プラスターボード)t12o・熱伝導率0.22w/m・K
上記が木造外断熱材使用住宅の外壁のモデルです。
「外断熱Aタイプ」を住宅金融公庫の計算方式に従って計算すると、
合計の熱貫流率は「0.472w/u・K」
熱貫流率:壁全体で、温度差1℃の時、1時間当たり、表面積1uで、
     伝達する熱量を示し、値が小さいほど熱を通し難い。
 木造内断熱計算モデル「内断熱Bタイプ」
外壁材:セメント系サイディングt12o・熱伝導率1.5w/m・K
外壁下地材:コンパネt12o・熱伝導率0.16w/m・K
内断熱材:グラスウール系t100o密度10K・熱伝導率0.050w/m・K
内部壁:PB(プラスターボード)t12o・熱伝導率0.22w/m・K
上記が木造内断熱材使用住宅の外壁のモデルです。
「内断熱Bタイプ」を住宅金融公庫の計算方式に従って計算すると、
合計の熱貫流率は「0.437w/u・K」

 柱や梁、隙間等を考えないで、純粋に材料が密に張れていることを前提として、
比べてみましたが、外断熱はこの時点ではけして、
断熱性能が優れているわけではないことが判ります。
 外断熱は40o以上の断熱材を使うと、外壁の取付や維持が大変になってきますので、
「外断熱Aタイプ」程度の材料の熱貫流率で(0.472w/u・K)程度でしょう。
 また、「内断熱Bタイプ」の熱貫流率は(0.437w/u・K)となり、
この時点では「内断熱Bタイプ」が僅かばかり、断熱性能に優れているのです。

 ただし、柱や梁等の断熱状況を加味すると、「外断熱Aタイプ」では、
柱梁の性能が断熱材の内側にあるため、プラスに働きます。
 その断熱性能を加味した値の熱貫流率は(0.334w/u・K)となり、
この値の部分は壁全体の20%程度を占めるので、
平均して熱貫流率は(0.444w/u・K)となります。

 また、「内断熱Bタイプ」の場合は柱や梁の断熱性能が断熱材より劣りますので、
マイナスに働き、熱貫流率は(0.860w/u・K)となり、
同様に柱梁部分を20%として平均すると、熱貫流率は(0.521w/u・K)となり、
今度は若干ですが、外断熱の方が、断熱効果が優れているとの結果が出てきます。

 しかし、何れにしろ、それほど大差があるわけではありません。
それでは、なぜ外断熱の方が性能が良いように思われ、
そのような本や、資料が出ているのでしょうか?
 ここで、しっかり把握しなくてはいけないのが、気密の問題なのです。
 この前から何度かお知らせした、私の設計した外断熱住宅でも、

 「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」のページです。 apssのhpに載せて置きました。 http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/kennkou1.html

気密テストを行いましたが、外断熱材を使い普通に造って
2.6cu/u程度の気密性になっています。
外断熱材を外側からビシと張り込むため、外断熱材の気密効果で、
気密性能は高気密住宅の値(5cu/u)を楽々クリアーしてしまいます。
 内断熱の住宅の場合で、断熱材がグラスウールの場合は、
断熱材がスカスカの為合板等の気密性能に因ることになり、
一般に10cu/u程度の隙間があるのです。

 内断熱住宅の場合は、高気密住宅にするためには、室内側にプラスチックシート
(ビニールシート)を張り、気密性能を高め湿気対策にも兼用しています。
 従って、同じ様な断熱性能であっても、内断熱の場合は、
一般的に気密シートを張る作業をしなければ、高気密住宅にすることができません。
 ちょっと脱線しましたが、気密も大いに断熱性能に影響しているのです。
 断熱材の性能だけでは部屋自体の断熱性能を語ることは出来ないことを、
認識しておいて下さい。

 壁の断熱性能に関して、もう少しモデルをあげて考えてみたいと思います。

次ぎに建物をコンクリートにしたときの外断熱モデル「外断熱Cタイプ」
外壁材:セメント系サイディングt12o・熱伝導率1.5w/m・K
外断熱材:グラスウール系t100o密度10K・熱伝導率0.050w/m・K
外壁構造体:コンクリートt150o・熱伝導率1.6w/m・K
内部壁:PB(プラスターボード)t12oGL・熱伝導率0.22w/m・K
上記がコンクリートの外断熱材使用住宅の外壁のモデルです。
「外断熱Cタイプ」を住宅金融公庫の計算方式に従って計算すると、
合計の熱貫流率は「0.414w/u・K」となります。
また、コンクリート内断熱モデル「内断熱Dタイプ」
外壁材:モルタル下地t20o吹付タイル・熱伝導率1.5w/m・K
外壁構造体:コンクリートt150o・熱伝導率1.6w/m・K
内断熱材:発泡ウレタンt20o・熱伝導率0.026w/m・K
内部壁:PB(プラスターボード)t12oGL・熱伝導率0.22w/m・K
上記がコンクリートの内断熱材使用住宅の外壁のモデルです。
「内断熱Dタイプ」を住宅金融公庫の計算方式に従って計算すると、
合計の熱貫流率は「0.841w/u・K」となります。

 コンクリートの場合に内断熱と外断熱を比べてみると、現在よく行われている、
 一般仕様の住宅では、壁の断熱性能で比べても、
圧倒的に外断熱の方が優れていることが解ります。
 コンクリートの気密性能は内断熱でも、外断熱でもコンクリート自体が、
気密性能を持っていますので、あまり変わりません。
 従って、断熱性能がそのまま住宅の暖かさや省エネ、結露等に結びつきます。
 両者の違いは断熱材が躯体を守り、躯体の強度に差が出るのと、
室内の環境の熱容量としてコンクリートの躯体を使えるのが、
外断熱材を使用した場合です。
 内断熱の場合はそれらのメリットは使えません。
 コンクリートの場合の外断熱と内断熱の差は、木造の場合より顕著に現れます。
 内断熱でも同程度の断熱性能にするには、断熱材の発泡ウレタンの厚みを、
40o程度に増せば、同様の熱貫流率性能を得られます。
 しかし、内断熱の場合には躯体全体のカバーを断熱材がしていないため、
結露やカビ、躯体の長期間の強度維持等に影響が出てくるのです。

 ここで、よく使われる断熱材の比較をしてみましょう。
一般に良く使われる断熱材熱伝導率(w/mK)費用(t10o/u円)備考
グラスウール10K0.0580一般住宅に使う断熱材
グラスウール32K0.036230高断熱住宅に使う断熱材
押出ポリスチレンA種0.04430高断熱住宅やコンクリートの断熱に使用
押出ポリスチレンB種0.028530高断熱住宅やコンクリートの断熱に使用
硬質ウレタン0.023580高断熱住宅やコンクリートの断熱に使用
吹付硬質ウレタン0.0261200隙間塞ぎやコンクリートの断熱に使用
フェノール樹脂(ネオマフォーム)0.023740新断熱材、火に少し強い
炭酸カルシュウム発泡材(ロックセルボード)0.0422000新断熱材、火にかなり強い

 もっと、色々な種類があるのですが、一般的によく使われる断熱材と、これからの
新しい、火に強い断熱材を取り入れて、比較してみました。
 費用は目安ですので、そのつもりで比較して下さい。
 グラスウールは値段が安い割りには断熱効果が高いので、
 今まで主流を占めてきましたが、結露が壁内で発生するのと、
時間が経つと自重等で隙間が出来性能が落ちる欠点があるので、
見直されるようになってきました。
 また、グラスウールには気密性は全く無いので、気密性を高める為には、
プラスチックシートを併用するか、気密に強い別の材料を使うことになりますし、
火に弱かったりそれぞれ欠点を持っています。
これらの問題点が沢山の種類の断熱材を作り出す結果となったのですが、
さらにそれらの断熱材に欠点があり、その欠点を補う為に、
また別の断熱材が作られているのです。

 換気システムにも、断熱材は関係してくるので、断熱材の選択方法を考えても、
色々な観点から比較検討して選択しなければならないのです。

 「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」は現在断熱材として硬質ウレタンを
使っていますが、フェノール樹脂の方が火に強く、近い内に変更の可能性があります。
 断熱材はこれからも発展してゆく材料であり、より高性能で、火に強く、
環境汚染の少ない新しい断熱材に変わって行くと思いますので、
それぞれの工法にあった、現状での最高の材料を選ぶ必要があります。

 「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」が硬質ウレタンを選択した理由は、
外断熱住宅の場合、壁外部に厚みをあまり大きく出来ないので、
熱伝導率の低い性能の良い部材であり、気密性が必要なので気密性が確保出来る、
費用がそこそこである、外断熱システムとしてサポートする企業が提供している、
基礎やコンクリートにも使える等々です。
 硬質ウレタンにも問題点はいくつかありますが、現状での外断熱材としては、
まだ価値のある材料です。

 外断熱住宅は「外断熱スパイラルエアーシステム住宅」に限らず、
断熱性能だけでは成り立たないことが、お判り戴けたと思います。
外断熱住宅に必要なもう一つの機能、気密・換気機能については、次回に考察致します。
次回に考察致します。

 今回は以上です。

ありがとうございました。


apss設計までをお願いします。

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