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◆         健康と住まい−16     ◆◆◆
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◆◆◆◆                 present by apssk


朽木 醒(くちき あきら)と申します。
健康と住まいの16回目になりました。


16・「2つの設計をした建て主−2」

 やっと隔週で送れるスタンスとなりました。前回の続きです。

 3階建ての設計がどのようなもので、2階建てになるとどうなるのか、
これは図面を見てみないと、理解しずらいと思いますので、
スケッチをhpに載せて置きました。
T邸apss設計案(A案)・2階建てで、建て主の要求を満たしたプラン。
T邸工務店案(B案)・3階建てで、同じ建て主の要求を満たしたプランです。

住まいには好みが有りますので、善し悪しを一概には言えません。
客観性を考えてデーターで比較してみます。

1.面積:A案115.2u(ロフト19.9u)、
     B案121.0u(収納4.1u)
2.高さ:A案8.86m、B案9.63m
3.階数:A案2階建て、B案3階建て
4.日影規制:A案適用外、B案適用範囲
5.準防火地域の防火基準:A案一般基準適用、B案木造3階用基準適用
6.構造基準:A案一般基準適用、B案木造3階用基準適用

 面積はA案の方が少し少なくなりますが、足りない部分を屋根裏のロフトでカバー
しています。屋根裏は木造住宅で勾配屋根を造る場合の余裕空間です。
未利用空間の利用ですので、コストも少なくて済みます。
 2階建案と3階建案では、何より大きく差がつくのが、コストの面です。
 上記5.と6.の防火と構造の基準では、3階(B)案とすると、
木造3階建の基準が適用となり、部材や手間が大幅に増加し、コストを押し上げます。
忠実に木造3階建ての防火と構造の基準を守ると、
3割程度のコストアップとなる、とのデーターも有ります。
 計画面でも木造3階にすると、窓の位置や大きさに制約があります。

したがって、基本の計画の違いによって、同じ程度の面積を持つ住宅でも、
2,3割の費用の違いは、すぐに出てきてしまいます。
 このことを見ても、設計の大切さが判ると思います。

一般的にハウスメーカーや工務店の場合、設計料を安く押さえ、
工事費の中に溶け込ませるような手法で、工事費の中で処理することが多く、
ハウスメーカーや工務店の内部で設計する場合もありますが、
何時も使っている設計事務所に、設計してもらう場合もあるのです。
どちらの場合でも、設計費用を押さえて設計しますので、
経験豊富な設計者による設計や、時間を掛けた設計はすることが出来ません。
 設計を直接設計事務所にしてもらうことによってのみ、建て主の本来の希望が
かなえられ、コスト面でも、メリットを生み出すことが出来るのです。

 ここは大事な部分ですので、再度記述しておきます。
 一般的に、高額の費用が必要な仕事なりビジネス等をするときには、
費用を払ってコンサルタントを雇い計画を立て、仕事をこなします。
 これと同様に住宅を建てる場合に、無料又は安い費用の計画では良い計画や設計は
出来ませんし、結局費用の無駄をしていることがよくあります。
 適正な費用を払って、尚かつ人まかせにしないで、設計に望むことが、
希望の空間を自分の住まいとし、余計な出費も避けることが出来るのです。

 ともかく、B案で不安を持っていた、建て主がA案を提案した途端、
全面的に信用し信頼を置いてくれたのです。 

建て主の見た目でも、中庭が特に気に入ったようです。
また、駐車場の考え方に、感心していました。小さな部屋にロフトを付けたことは、
子供が一番気に入ったようで、屋根裏で寝れると喜んでいたそうです。

 設計の立場としての説明を少し付け加えますと、中庭は、1階2階共屋外としても、
屋内の延長としての空間としても使え、空間を自由に広げることが出来ます。
 各部屋は2面、3面の採光換気の窓を持ち、明るさと風通しはとても良く、
部屋の居心地も独立性とふれあい性を併せ持った優しさのある環境と言えます。
 駐車場は車を奥まで入れたことで、玄関として邪魔にならず、
いざと言う時の2台目の駐車場にもなります。
 ロフトも屋根裏収納も広く、寝室代わりにも使え、夏冬物の入れ替え等、
物の出し入れにも余裕のある広さです。
 その他にも沢山のアイディアが隠されているので、よく見て下さい。
 建て主はこのプランを2週間じっくり吟味しても、味のあるプランです。
 「本当に見飽きることがなかった」と話してくれましたので、
とても光栄に思った次第です。

 A案を計画し建て主と合意し、設計を進めようとした段階では、
B案で確認申請が役所に提出されていました。
役所に問い合わせに行きますと、こんなケースは初めてです。
上司と検討するのですこし待って欲しいと言い、とてもビックリしていました。
上司との検討結果は、面積、高さ共に小さくなるので、問題はありません。
確認申請の出し直しをして下さいとのことでした。
 一般的には確認申請を出してしまうと、十分に希望が叶えられず、
尚かつ、費用が高くなる設計でも、ほとんどの人は我慢をしてしまうようです。
 役所の応対にそのことがよく現れていました。

 今回の建て主のように、費用や面倒な手続きを恐れず、
希望を叶える為の努力をすると、希望が叶えら満足のいく住まいになり、
 同時に無駄な出費も押さえられ、結局は得になるのです。
 しかし、一端始めた仕事の方向転換はとても大変なことです。
住まいの場合は、建て主には仕事との思いは有りませんので、
仕事として進めている業者の方が主導権を握った形に成りやすいのです。
 変だ思ったときに、それまでにかかったエネルギーや費用は、必要コストと考えて、
やり直しが出来る勇気と余裕を持って住まい造りにあたることをお奨めします。
 その勇気と余裕が、疑問を持ったままで進む、欠陥住宅への道や、
最終的に嫌な思いや損をしたとの思いを、避けることが出来るのです。


 この建物はその後、外断熱の、スパイラルエアーシステム住宅へと
進んで行くのですがその経過は次回に報告致します。

 今回は以上です。

ありがとうございました。


apss設計までをお願いします。

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