Main に戻る


◆         健康と住まいのQ&A−13         ◆◆◆
◆◆
◆◆◆
◆◆◆◆                 present by apssk


朽木 醒(くちき あきら)と申します。
健康と住まいの13回目になりました。

発行部数
13・「スエーデン流の健康住宅の断熱材」


13・「スエーデン流の健康住宅の断熱材」

 3ヶ月ほどお休みを頂きました。失礼いたしました。
MMは届くと嬉しいような、めんどくさいような、複雑な気持ちです。
私も、何通か拝読しているMMがありますが、私自身が置かれている
その時の状況により、嬉しくもあり煩わしくもあり、不思議なものです。
 まあ、これからも気楽におつきあい下さるようお願い致します。

 さて、今回の内容は、健康住宅に良いと言ってきた外断熱住宅の、
スエーデン流健康住宅の内容を見てみたいと思います。

 朝日新聞では、2月の中頃「くらし」の特集でカビやアレルギーを防ぐための、
工法として「外断熱工法が最近注目を集めている」との記事を載せていました。
 テレビでは、昨年頃より何度かNHKを始め各局で、
外断熱住宅の特集の報道がなされています。
ハウスメーカーでも昨年あたりより、外断熱工法を使用した住宅の広告が
結構載るようになってきています。

 外断熱工法の良さが注目されてきた感じが致します。
朝日新聞の2月の記事では主にコンクリートの集合住宅が対象となっていました。
 内断熱工法の場合は、完璧な断熱工事が難しいので、断熱材の継ぎ目やコンセント
ボックス等に生じる隙間から暖気が漏れて結露を生じ、その水分がカビやダニ等の
温床となり、アレルギー物質を増長させたり、建材を腐朽させる原因となっています。
 また、コンクリートの壁や柱が、外気や日射等の熱で膨張や収縮を繰り返し、
コンクリート自身の劣化を早める原因の1つにもなっていると、
その記事は伝えています。

 一方外断熱工法にすると、壁の温度が室温と同程度になるので、
室内側での結露は起きません。
外断熱の良いところの1つは、外気温や太陽の輻射熱(直射熱)を遮断して、
熱や光を建物の構造体に影響させないところなのです。
 外断熱工法では、壁の外側で断熱をしますので、断熱材の内側にある構造部分や
壁等が室内温度と同程度の温度となり、コンクリート等の熱容量の大きな材料の場合は、
コンクリート自身が蓄熱材の替わりにもなり、住まいを快適な室温に保つための
補助的役割も果たします。
 したがって、構造的な耐久性においても、外断熱方式が、
構造材(特にコンクリートや鉄骨)の熱による膨張・収縮の繰り返しによる
劣化から構造体を守る働きをします。
 外断熱方式の建物の耐久性が飛躍的に向上する理由が、
このことでも容易に理解出来ると思います。

 しかし、欧米では外断熱工法が主流ですが、
国内では内断熱工法が一般的に使われています。
 外断熱工法と内断熱工法との違いが、日本の住宅の寿命を極端に短くしている
原因の1つであることは確かです。

 朝日新聞のつい最近の4月30日の「スエーデンの家」の特集では、札幌より
緯度で15度程北のスエーデンのイエーテボリの木造新築住宅が紹介されています。

 この住宅は、我が国ではタウンハウスと呼ばれる、4戸続きの集合住宅の木造で、
4月の初めの時期では、外気が0度前後まで冷え込む時期だそうですが、暖房無しで
セーターのいらない室温に保たれており、窓ガラスに結露も起こらないそうです。

 この暖房のほとんどいらない住宅の仕組みは、断熱の徹底と室内で発生する生活排熱、
さらに屋根の太陽熱パネルの利用だけを室内の熱源として使っているのです。

 この記事で特徴的なのは断熱材の厚みがまるっきり違う点です。
日本では通常100mm程度のグラスウールを断熱材として使い、内断熱をしますが、
 このスエーデンの住宅は400mmの厚さの断熱材(記事には載っていませんが
グラスウールだと思います)を外断熱として使用し、
高断熱サッシュと特殊フィルムを張った、高断熱ガラスを使っている点です。

 さらに、室内で発生した生活排熱(炊事や照明、冷蔵庫、家電製品、体温等)
を熱交換機で排気の際に室内に戻す仕掛けが取り入れてあります。
 そして太陽熱パネルによる太陽熱の利用、の3点が大きな特徴です。

 特に400mmもの断熱材は内断熱では使用不可能な使い方です。
外断熱だからこそ400mmもの厚い断熱材を使え、室内で発生する熱を無駄なく
使い切ることが出来るのです。

 スエーデンでは1960年代に高度成長期を迎え、住宅の量産を始めました。
1973年のオイルショックがきっかけで、エネルギー節約の観点から、
高気密・高断熱住宅を国策で推進し断熱材や二重ガラスの使用も義務化されましたが、
80年代前半に不完全な断熱住宅の床下からカビが発生したり、
建材からの化学物質が室内の空気を汚染し、ぜん息やアレルギー疾患を引き起こす
「シックハウス」も社会問題になり1987年の法的規制によって、
現在のような快適で高耐久性の住宅が出来るようになってきたようです。

 この快適で高耐久住宅はスエーデンでの資産価値が上がり、尚かつ100年程度の
高寿命が得られるため、廃材を減らすことが出来、世界的環境の維持にも
貢献しています。

 考え方や環境の違いがありますので、このスエーデンの住宅をそのまま日本に
持ち込むことは出来ませんが、外断熱にし断熱を特に強化し、同時に結露を防ぐこと、
熱交換機によって排熱を利用すること、さらに太陽熱の利用は、
これから住宅を造るのであれば、すぐにでも取り入れることが可能な方法です。

 我が国でもスエーデンの住宅の手法を取り入れて、快適性と高耐久性を
手に入れることが出来ます。
今後は、スエーデン同様高耐久住宅の資産価値も上昇することが考えられます。

 ただし、このような情報があるので、この情報のように造って欲しいと頼んでも、
簡単に出来る訳ではありません。
なぜならば、住まいは色々な要素が複雑に絡んで出来ているからです。
 その1つの大きな要素は、費用の問題です。
 いくらでも費用がかけられれば出来るものでもありませんが、
住まいを造る場合には予算があります。
その中で、快適性と耐久性にどのくらい費用を回せるかバランスを考えなくては
なりません。

 また、外断熱方式や熱交換機式換気についても研究する必要があります。
 例えば、スエーデンの夏の気温は、7、8月の月平均気温で16〜17度です。
夏のクーラーによる逆結露などは全く考える必要が無く、冬の対策だけを考えれば済む
地域性を持っています。
 スエーデンで良い方式だから、そのまま取り入れれば良いと言う訳にいかないのは、
このような地域の環境の違いを考慮しなくてはいけない点なのです。

 住宅を造る場合全てをお任せにはできません。
最終的には費用の問題となるのでしょうが、国内ではまだ使われ方が少ない、
新しいシステムを取り入れる場合、決定するのは建主です。

 新しい方式を取り入れようとする場合には、それなりの研究が必要です。
 今回のスエーデン流の健康住宅の場合は、
外断熱方式と熱交換機式換気がポイントになります。
 その内の、外断熱方式に関しては、国内でも外断熱用外壁材料として、
製作するメーカーが出始めていますし、
 私共も、それらの材料を使った健康な住宅のトータルシステムとして、
外断熱方式の住まいを提案しています。

 上記に述べた、いずれかの外断熱システムを使うことによって、
外断熱方式住宅は、比較的簡単に出来ます。
 しかしながら、我が国の断熱材の厚さは、一般的に、経済効率を優先させ、
基準ぎりぎりの薄目の断熱材を使用していますので、断熱不足の傾向にあります。
 前述したスエーデンの住宅の場合は断熱材の厚さが400mmとなっていました。
グラスウールでも密度等で様々な種類がありますので、一概には言えませんが、
我が国で住宅用に使用しているグラスウールは、関東地方で100mm程度を
使用することが多いのです。

 ここで分かり易いように、グラスウールの住宅用(10K)の住宅金融公庫が
 基準としている厚さを地域ごとに記述しておきます。
 部位的にも色々ありますので、壁に関してのみ見てみることにします。
 仕様にも種類があります。
**仕様の区分**
(A):普及(一般)タイプ、(B):省エネルギータイプ、
(C):次世代型省エネルギータイプがあります。
**地域の区分**
(T):北海道/(U):青森、岩手、秋田/(V):宮城、山形、福島、茨城、
栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、滋賀/
(W):T・U・V・X・沖縄以外/(X)宮崎、鹿児島

**住宅用グラスウール(10K)の住宅金融公庫仕様:(単位mm)**
(T):A110、B135、C165・C外断熱145
(U):A50、B100、C110・C外断熱85
(V):A50、B100、C110・C外断熱85
(W):A35、B70、C110・C外断熱85
(X):A25、B45、C110・C外断熱85
 以上のような基準が住宅金融公庫から示されています。

 この基準でも判る通り外断熱方式は、壁内部に断熱材を充填する内断熱方式より、
同じ材料で厚さが薄くても基準を満たせる優れた性能があると解釈されています。
 断熱材の厚さは、北海道の一番優れた省エネルギー次世代タイプの基準でも
165mmを使えば、OKなのです。

 スエーデンの中でも寒い地方での最も寒いのが1、2月で月平均気温は、
−12度程度です。
 札幌の一番寒い1、2月の月平均気温は−5度程度です。
 この一番寒い時期の月平均気温を考慮して単純に断熱材の厚さを比較してみると、
金融公庫の次世代外断熱のグラスウールの厚さを、多めにに換算しても、
外断熱方式で200mm厚になるのがせいぜいです。
 前述のスエーデンの住宅は、公庫基準の厚さの2倍の厚さを使用することで、
ほとんど暖房のいらない快適空間をつくり出すことに成功しているようです。
 この断熱材の厚さの違いが大きな意味を持っていると言えるのではないでしょうか?

 今回はスエーデン流の健康住宅の断熱材の考え方を考察してみました。

 今回は以上です。

 hpに参考になる外断熱住宅の例を載せています。
下をクリックしてください。
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/apssk/kennkou/sotodan1.html



ありがとうございました。


apss設計までをお願いします。

 前頁  目次  次頁