換気の考え方−3「高気密高断熱住宅の換気の重要性」
高気密高断熱の住宅は、公庫の割増融資の制度もあり、快適性も向上するため、
新築住宅の中にしめる割合は年毎に増加の傾向を見せています。
この、高気密高断熱住宅は、高気密であるがゆえに、換気量が自然換気だけでは不足
します。前回にも例として書きましたが、タバコを全く吸わない家庭でも、最低
1,000m3/日程度は不足しタバコを吸うような家庭ですと4,500m3/日程度
も不足することになります。この換気量を一般的には機械換気によって計画的に換気
する必要があります。
計画換気の場合、トイレや風呂、厨房などの汚染室(臭気、水蒸気、油気等を発生)
を負圧状態の、排気場所とし、トイレや風呂から30〜50m3/h程度の常時排気に
よって、冷暖房効果を引出し冷気や暖気を取り入れて快適な室環境にします。
厨房は2つの換気が必要で、一つはレンジフードからの排気とその近くに吸気口を
設置して、調理による大量の換気量を処理します。もう一つはトイレや風呂と同様に
少量の排気による冷暖房の引込効果を出すための常時の排気です。
2番目の排気は部屋の間取りによりダイニングやリビング一体の部屋の場合には、厨房
として別に取らないことも出来ますが、汚染室対策としてはLDKなどの部屋でも、
臭気や汚染物質をLDの方向に流さない為にも、設置するのが良い方法です。
ちょっとコーヒーブレーク、一休みして下さい。
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居間と食堂(LD)は一体排気を考えて結構です。ただ出来れば吹き抜け等で排気を
する方式が、一番排気効率が良く推薦できる方式です。外気の取り入れは、欄間程度の
高さから吸気することが多く、機械排気口をより高い位置に設置すると、空気の対流に
より古い空気と新鮮な外気とが入れ替わるように動き、新鮮な環境となるからです。
高気密高断熱の場合は、吹き抜けや天井の高い部屋でもそれほど問題は起きません。
部屋の中の温度差がそれほど大きくならないため、冷たい空気と、温かい空気の間に
空気の層が出来ないからです。部屋全体にゆっくりとした空気の対流を起こし、部屋の
一番高い部分から排出することで、効率を良くします。
次ぎに、寝室ですが、出来れば欄間などの開口を設けLDなどと上部で繋がった
部屋にして、個々の寝室からの排気は少量にするのが最良の方式です。
機械排気の音は夜中などには結構騒く感じるものです。寝るときにはLDからの排気
にし、寝室各部屋からの排気はスイッチを切れるようにするのが良いでしょう。
寝室を完全に独立させた場合には、常時少量の排気が必要ですが、個別の空調も必要
となり、エネルギーの無駄、機械の無駄が生じます。なるべくどこかで空間をつなぐ
ことをお薦めします。
納戸や押入、クロゼットなど小さな部屋にも、出来れば排気口の設置が必要ですが、
設置が出来ない場合や不向きな場合等もありますので、その場合は、通気口を扉や壁の
上下に設置するようにし、大きな空間と繋げ、住まい全体として温度差が生じる部分を
減らし、水蒸気や化学物質、ダニ、カビ、埃など、小さな空間から発生する汚染物質も、
集中換気方式による清浄作用を借りて、住まいの環境を良くするようにします。
旧省エネルギー住宅では、断熱はしましたが、気密性については全く対策を
していませんでした。サッシュの気密性もあまりありませんでした、部屋の隙間を
減らす工夫もしていませんでした。したがって、温度の高低がある部屋があっても
当然と思っていました。空調の効率から言っても、全室空調はエネルギーロスによる、
大きな負担になるシステムでした。旧省エネルギー住宅でもセントラル空調のシステムは
は有りましたが、ランニング、イニシャル両方のコストがとても高くなるシステム
でしたので、一般的な普及にはほど遠い存在でした。
気密性、断熱性の技術が進み、高気密高断熱住宅が推奨され、やっとセントラル
空調に匹敵する快適性が得られる住宅になろうとしています。
ただし、高気密高断熱住宅の思想は、20年ほど前に北欧で生まれた考え方で、
日本での歴史はほとんど有りません。住宅公庫仕様にしろ、建設省の指導にしても、
暗中模索の部分がかなりあります。
そこで最後に、高気密高断熱住宅の長所と欠点をまとめておきます。
長所 断熱性能が良い 空調費(イニシャル・ランニング共)が安くなる。 気密性が高い 音が漏れにくく、外部の音も静か。
埃や花粉も少なくなる。全室暖冷房可能 健康に良い(脳卒中などのヒートショックがない)。
オープンな間取りが自由集中換気方式 個別に換気をする手間が不要。
フィルターの掃除個所が少ないその他の効果 シックハウス、花粉症、アレルギーなどの対策が取りやすい。 短所 冬場は乾燥気味 結露がなく、水廻りは個別に排気するため、加湿器が必要な場合も。 音が静か 内部の冷蔵庫や洗濯機、パソコン、換気扇などの音が気になる。 抵抗力が弱くなる 快適空間に長く居ると、肉体的に外部での抵抗力が弱まる。 外部との接触が減少 窓開けや、掃除が減り、自然や外気に触れる機会が減少する。 その他の逆効果 住まい方が不慣れのため、ファンヒーターや防虫剤、芳香剤等の影響が出る。
以上、
次回は「住まいと断熱の関係」の予定です。
ありがとうございました。
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