6月22日の朝日新聞にシックハウス対策として化学物質の総量規制の方針が厚生省
から発表がありました。
また、6月19日の朝日新聞では環境ホルモンとしての化学物質の認識がうすれて
きたとの報道もありました。
もともと、化学物質としては同種のものですが、シックハウスとして直接的に影響が
ある場合は、厚生省も重い腰を上げ始めましたが、環境ホルモンとすると濃度が極端に
薄くても影響が出る場合があり、的確な判断を下すことが難しいのです。
そのため、安全性への感覚が鈍り、環境ホルモンとしての意識を薄れさせるです。
ただ、シックハウスとして総量規制の方向が考えられることは好ましいことです。
総量規制と言いましても、第1回目に記述しました、TVOC「化学物質の総合計値」
を、確実に規制するかのような感じを受けますが、実際にはガイドラインとして提示
になるようです。
このガイドラインを守ることを条件に契約すれば、住まいの完成引渡時に
室内空気汚染度を調べる必要が出てくるので、安全性が高くなるとのことです。
このような提示のしかたは、関心度が高くないと、価値のない規制です。
関心度が高くて初めて、効力を発揮するのがガイドラインなのです。
では、事細かに規制値を設定すれば良いのか、と考えますが、あまりにも厳しく
規制することは、無理があります。
現在使われている化学物質は数万から10万種類に昇ると言われています。
さらにひと月に2000種類以上もの化学物質が創り出されているとのことです。
前にも述べましたが、環境庁が怪しいとして上げた化学物質は現在67種類
ですが、このほかにも人体や環境に影響を及ぼしそうな化学物質はいくらでも出てくる
可能性のがあります。
これらを全て指定していくことは時間がかかることですし、化学物質が使われ出して
影響が考えられるようにならないと、規制は出来ません。
そこで、最良の方法は総量規制をし、さらに自主規制をさせることなのです。
業界が、また個々の会社が自主的に研究中に人類のことと地球のことを考えて創り出し
使用すれば、危ない化学物質は格段に減ります。
ただ、企業の良心を信じて、環境庁の総量規制で良しとするのでは、とっても安心
出来ません。では、どうするのか?
ここで、私たちみんなが勉強をし人体や地球環境に影響の出る化学物質を使用したり、
創り出し販売した企業を、排除するようなシステムを作り上げることが大切です。
全を、行政に委ねることは企業と行政の癒着を生むことですし、私たちが盲になる
ことです。現在規制緩和とのかけ声で、いろいろな分野の権益が開放されつつ
ありますが、開放先が役所の人達の天下り先になっているところも沢山あります。
このことは、私たちが役所任せにしていることが大いに反映しています。
したがって、私たち自身が学んだ上で判断して行くことが、よけいな経費も掛けずに、
最良のものを企業に提供してもらう一番良い方法なのです。
住まいはもともと、一般庶民のものではありませんでした。
明治時代いえ戦前までは、借家か自分たちの集団が寄り集まって直接造るかのどちらか
の方法で造り出していました。
借家の場合は大家さんが何軒も造り経験を持っていましたし、集団で造る場合は、
その集団にノウハウが備わっていたのです。
現在私たちは、家族で住まいを造るのが一般化してきました。
したがって企業を頼りにしていますが、住宅産業に関しては大きな間違いです。
車や家電のように交換や変更が利かないのです、高額物件ゆえにメーカーの変更や
造り直しがほとんどできません。
このような住まいを、夢だけ大きく描いて手に入れることは、
非常に危険だと言うことがお解り頂けると思います。
ちょっと脇道にそれましたので軌道修正し、今回は換気の話です。
化学物質やカビ、ダニなども含めて、これからの室内環境にとって最重要ポイントは
換気です。なぜならば、気密性がよくなり、自然に任せた換気では量的に不足します。
今までの住宅は、気密性がそれほど高くありませんでした。
ここ4,5年で高気密、高断熱の流れが押し寄せてきています。したがって、換気の
方法を間違うと、危険な目に遭いますし、病気や子供の異常、下手をすると死亡事故に
つながることすら考えられます。
高気密住宅で、石油ファンヒーターを使う人が居たりするのです。
石油ファンヒーターは炭酸ガスや一酸化炭素だけでなく、ホルムアルデヒドも
出します。また、殺虫スプレーや、殺菌剤、カビ除け剤、芳香剤などの室内で使用する
化学物質も増えています。安全なように言われますが、前提条件は換気です。
生活習慣や気持ちは、気密住宅ではなく、住まいだけ気密住宅とのアンバランスが、
住まいを造る人々に現れています。もっと良く換気について考える必要があります。
そこで、換気の基本として、換気の種類を上げておきます。
第1種換気 機械換気で吸気、排気の両方を行う 第2種換気 機械換気で吸気のみ、自然に排気を行う 第3種換気 機械換気で排気のみ、自然に吸気を行う 第4種換気 吸気、排気の両方を自然に行う
第1種換気:一般的に機械給排気と言い空調に外気を供給しながら、排気換気扇を付け
吸気した量と同量の排気を行い室内空気のバランスを図る。
又は給排気両用型の換気扇や熱交換型給排気換気扇により換気する。
病院、百貨店、オフィス、美術館など、大規模建築の空間で多く使用
第2種換気:吸気タイプの換気扇で外部のきれいな空気を取り入れ、排気は自然に
任せる換気方法で、押し出しタイプのため高気密には向かない。
室内が正圧となるので、他の部屋の汚染空気を取り込まず汚染されない。
クリーンルームや、比較的室内環境を清浄に保ちたい室に使用
第3種換気:排気を換気扇で行い、吸気は吸気口や室内の窓隙間から行う
室内が負圧となるので、汚染室からの排気に向いている。
高気密住宅はこのタイプを取り入れ、一般居室(居間・寝室等)と汚染室
(トイレ、浴室、台所等)とに分けて、機械排気する場合が多い。
住宅のトイレ、浴室、台所等は一般にこの方法が多く使われている。
第4種換気:給排気とも自然に任せる換気方式
換気量は温度差や風等外部環境により、不安定である。
隙間からの換気を無意識に取り入れている場合が多い。
窓を開けて換気をしないと十分な換気が出来ない、雨の日、冬などの
窓開けが不便な時に換気が不足するきらいがある。
高気密住宅には向かない換気方式である。
高気密住宅の場合は、第1種及び第3種の換気方式で換気を考える必要がある。
リビング、ダイニング、寝室等は汚染物質の発生が少ないので全体を一緒に換気する
方式にし、トイレ、浴室、台所は汚染物質の発生が多く、局所換気(機械給排気又は
機械排気に吸気口との方式が望ましい。特に台所はレンジフード等の汚染物質の捕集器具
を取り入れて、汚染物質の排気効率を高める必要がある。
最後に換気の必要性を必要な順に上げておきます。
@汚染源そのものを除去する。 石油ファンヒーター、室内型ガス湯沸かし器、殺虫スプレー、防虫剤、抗菌剤等 A汚染源から局所排気する。 トイレ、浴室、台所、床下、屋根裏等 B外気を入れて混合希釈しながら排気する リビング、ダイニング、寝室、納戸等 C自然に任せる 従来型の住宅のリビング、ダイニング、寝室又はパッシブ換気システムが出来る住宅等
上手な換気は室内の汚染物質を排除し、きれいな空気を取り入れ、空調の効きを
良くし、カビやダニの発生を防ぐことが出来ます。
ただし、あまり風速が早いと冬は寒くなり、空調の無駄が多くなります。遅いと夏に
暑く感じます。夏冬の換気速度を変えられるような方式が理想的な換気となります。
さらに、計画的に住まいの中に空気の澱みが出来ないような、全体にゆっくり流れる
換気方法を考えないといけません。部屋を小割にすると空気の流れに澱みが出来ます。
なるべく大きな部屋にし、オープンな住まいにすることが、
家族のコミュニケーションの面でも役に立ちます。
次回は住まいとの関わりとしての化学物質−2(換気続編)の予定です。
ありがとうございました。
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