6月2日の朝日新聞にPCB(ポリ塩化ビフェニール)の散逸が問題と
PCBは1930年ころ地上にでまわりはじめ、その安定した構造と不燃性物質、
不電導性などの特徴で1976年に米国で製造禁止になるまで、世界で150万トン
以上も生産されていました。現在でも使用されている国も有ります。
ほとんど改善が見られない物質と言われています。
新聞での解説では、PCBが不電導液として、トランスや変電設備などに使われ、
しかし、このPCB入りの設備を保管している事業所には中小企業も多く、
つぶれたり、担当者が居なくなったり、移転したりして紛失するモノが非常に多く、
紛失したモノは破棄されるのがほとんどで、破棄の過程でPCBが放散するのです。
また、PCBの処理は大企業でも、費用や住民からのクレームがあり、
なかなか難しいそうです。
このように、世界の多くの国で製造禁止された化学物質ではあるのですが、
今もって放散が続いている状態なのです。
このPCBはカネミ油症事件で、日本では特に有名であり、多くの被害者を直接的に
出しましたが、間接的な環境ホルモンとしての被害はまだこれからなのかも知れません。
かの有名な環境汚染を問題にした名著「奪われし未来」(ダイアン・ダマノフスキ
他共著)に例としてのPCBの地球上での汚染過程が書かれています。
その過程では電気設備の破棄物からPCBが放散し、雨や風、日の光や熱によって
植物に吸収され、植物を餌とする虫などの体内に蓄積し、次第に水中生物の体内に
濃縮されながら移動をくりかし、海の中の魚類でさらに食物連鎖の濃縮をし、
ついには北極圏のアザラシや白熊の体内にまで達してしまう現状が示されています。
PCBは非常に安定した分解されにくい化学物質であり、癌やカネミ油症で示された
症状をつくり出す猛毒性の化学物質です。
さらに、環境ホルモンとしての影響も確認されている化学物質です。
この物質がいまや、全ての人類の脂肪分の中に存在しているのです。
現在の蓄積量は、大人にはほとんど問題ないようですが、生まれてくる胎児や
生まれたての乳幼児にはホルモンや遺伝子に影響を与え始めています。
環境ホルモンと言う言葉は近頃頻繁に出てきますので、
ご承知の方も多いと思われますが、私の理解の範囲で、説明をさせて戴きます。
「奪われし未来」(ダイアン・ダマノフスキ他共著)では、ダイオキシン、PCB、
DDT、トリブチルスズ、ビスフェノールA、ノニルフェノール、
フタル酸化合物などを取り上げています。
その他にも、環境庁の「外因性内分泌攪乱化学物質問題に関する研究班」は前記の
環境ホルモンとして影響している化学物質を含めて、疑わしい化学物質として
67種類をあげています。
では一体この化学物質類は何をするのでしょうか。直接的な毒性については、
よく問題になりますのでご承知だと思いますが、癌を発生させる因子だと言うことです。
間接的な影響が環境ホルモンと言われる由縁なのですが、
こちらの方が今後の人類に対しての影響が大きそうです。
まず、生殖機能に作用します。なぜ生殖機能に影響するのかまだはっきりとは解って
いませんが、生命を生み出すときのホルモンは微量なようです。
この微量なホルモンに分子構造が似ているので、取って替わって影響を与えるのです。
微量とはppm程度を言いますがホルモンはppbレベルで細胞に働きかけています。
環境ホルモンとしてのダイオキシンやPCBは、食物連鎖の濃縮で、
ppbレベルになることは十分あります。
ppmは1/100万の濃度 ppbは1/10億の濃度 pptは1/1兆の濃度
ほとんど、考えられない超低濃度でも環境ホルモンとしてなら、
十分作用して本物のホルモンに取って代わって攪乱を起こします。
今まで、考えられなかった超低濃度ですので、
基準値としても全く気にしていなかった範囲なのです。
この程度(ppb)のレベルでも生命体に影響を与えるのが化学物質であり、
さらに影響が出るのが次の世代とのことで、大変発見しずらく、わかりずらいので
やっと問題になり始めてきたのです。
今判っている環境ホルモンとして影響している例は、アメリカの象徴である、
ハクトウワシの80%以上が巣作りを止めてしまったり、カワウソの半減や
孵化しないアリゲーターの卵など、全て生命の生殖機能の攪乱によるものばかりです。
人類の男性の精子も若い男性ほど減ってきています。
1940年には精液1ミリリットル当たり1億1000万個程度であったのが、
1990年には7000万個程度まで約半減しています。
この事実も、化学物質が多量に使われだし、
生殖機能に影響を徐々に与えてきた結果だと言われています。
超微量で人類の生命の根本に関わるホルモンに成り代わって生命発生段階で
攪乱するのが、環境ホルモンと言われている化学物質なのです。
生命の誕生だけでなく、脳にも影響を与える可能性が高いと実験結果も出ています。
IQは、昔より5ポイント下がったとの報告書も有りますし、集中力が無くなり、
多動症など、一寸したことで「ムカついたり」「キレたり」することも多くなります。
全てが、環境ホルモンのせいでは無いのですが、環境ホルモンによる影響も大と
考える必要があります。
このように、超微量で作用する環境ホルモンとして疑いを持った化学物質が
住まいに使われていたらどうなるでしょう。
間接ではなく、直接身の回りにあるモノから放散されて暴露を受けたら、
どうすることも出来ません。
なるべく、身の回りには、あやしいモノを置かない必要があります。
洗剤や殺虫材、芳香剤、ワックスなどは自分で排除することが出来ますが、
住宅やオフィスの内装材などに含まれている化学物質は、
知らないうちに暴露を受ける可能性が高くなります。
環境ホルモンとして、明らかな物質や疑わしい物質で建材の中に含まれそうな
化学物質を以下に上げておきます。
難燃材(壁紙、カーテン、絨毯等): ポリ臭化ビフェニール類 シロアリ駆除剤、木材処理防腐剤(床下や木材に塗布): ヘキサクロロシクロヘキサン、リンデン、クロルデン、オキシクロルデン、トランスノナクロル 殺ダニ材(絨毯、壁紙等): ケルセン 界面活性剤(合成洗剤類): ノニフェノール 印刷インキ(壁紙、フローリング、長尺塩ビシート、印刷物): アルキルフェノール プラスチック材(ポリカーボネート板、同食器、エポキシ系接着剤): ビスフェノールA プラスチックの可塑剤(床用Pタイル、人造皮革、塗料、電線被覆材): フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル プラスチックの可塑剤(ラッカー、印刷インキ、接着剤、セロファン、塗料): フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジ-n-ベンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジプロピル
などが住まいの内装材に含まれている可能性の高い、
環境ホルモンとしての疑いをもたれている化学物質です。
今すぐ、危険になるわけでは有りませんが、
妊婦の方や乳幼児をお持ちの方は要注意です。
次回は住まいとの関わりとしての化学物質の予定です。
ありがとうございました。
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